民事訴訟法の勉強方法について
Date:2015.09.10
今回は、民事訴訟法の勉強方法についてお話ししたいと思います。民事訴訟法の科目は、「眠素」ともいわれるように、なじみにくい科目のように思われていますが、実は大変論理的でありかつ興味深い科目なのです。そこで、この科目の勉強方法を以下に述べてみたいと思います。
(1)まず、最初は、民事訴訟手続の全体の「流れ」ないし「概略」を把握することです。
民事訴訟は、
[1]訴えの提起
[2]被告への訴状・呼出状の送達
[3]第1回口頭弁論期日(事件の振分け)
[4]争点整理手続期日(弁論準備手続)
[5]第2回口頭弁論期日(集中証拠調べ)
[6]口頭弁論終結
[7]判決言渡し
[8]控訴審
[9]上告審
の順序で進行します。そして、自分の検討しようとする問題が、その手続のどの部分なのかをしっかりと理解することです。全体を見ずに個々の問題について検討しても、「木を見て森を見ざる」ということにもなりかねません。
(2)次に、基本書を読むとき、最も大切なことは、「基礎概念」をしっかり身につけることです。民事訴訟の3要素は、(ア)裁判所、(イ)当事者、(ウ)訴訟対象(=訴訟物)ですので、これらの3要素に関連した概念・定義をしっかりと理解することが重要です。
(3)第三に、基本書は、「最低3回」は必ず「通読」して、民事訴訟法の「体系」を把握するようにします。わからないところがあっても、最初は気にしないでどんどん読み進むことが重要です。最初は分からなかった部分も、2度、3度と読み進むうちに、だんだんと理解が深まります。また、2度目からは、民事訴訟の諸制度や諸原則について読み進む際、その制度や原則は、どのような目的を持ったものであるか(=「制度趣旨」等)をも考えながら読むと、さらに理解が深まります(例えば、民訴142条の重複訴訟禁止の原則の制度趣旨とは、既判力の矛盾・抵触の防止、被告の応訴の煩からの保護、及び訴訟経済の要請にある、とか、自白の拘束力の根拠は、相手方の信頼保護、自己責任、証拠の散逸による不利益の防止等にある、とか、訴訟行為に意思の瑕疵の規定が適用されないのは、訴訟手続の安定の要請にある、というようにです)。
(4)基本書に引用される「条文」は、重要条文が多いので、特に重要な条文は、常に六法全書を引いて確認し、六法や自分の使用する基本書にチェックしておくようにします。
(5)また、条文を読む際は、その条文の意味だけでなく、常にその条文がどのような目的をもつて規定されたのか(=条文の「立法趣旨」)をも考えながら読むと、やはり理解が深まります。
(6)民事訴訟の理論をある程度理解できるようになったら、自分だけの「サブノート」を作ってみることをお勧めします。その際、「図表化」したりして、一目で論点が理解できかつ「記憶」しやすいように工夫してみるとよいと思います。これは、後に定期試験や司法試験の際に短時間での復習を可能にするので、大変役立ちます。
(7)また、友人と民事訴訟法の重要な問題について、「議論・討論」してみることをお勧めします。これは、将来、弁護士として、法廷で相手方弁護士や裁判官との間で弁論する際の弁論術の大変良い訓練にもなります。傍聴人が多数いる場合でも、あわてず冷静かつ論理的に弁論を行うことができるようになるでしょう。
(8)民事訴訟は、実体法上の権利または法律関係を審判の対象とするものですので、民事訴訟理論を理解するには、民法や商法等の「実体法」の理解が不可欠の前提であり、これらの実体法をも十分に理解しておくことが、民事訴訟法を理解する上でとても重要です。
(9)民事訴訟法上の問題を考えるときは、単に抽象的にではなく、必ず「具体的な事例」を考えて検討してみると、理解が深まります。
以上、大変簡単ですが、民事訴訟法の学習方法についてお話いたしました。民事訴訟法は決して難しい科目でなく、とても論理的で楽しい科目ですので、ぜひ頑張って下さい。(K)