昔見た夢

記事
Date:2013.11.14

一昨日実務の関係で京大に行き、若い頃金沢でいつも一緒だった友人の研究室にて懐旧の念とともに時間を過ごした。次の日曜駒大で開かれるのは法哲学会にもかかわらず、そこで報告する中身は商事留置権の再生手続上の別除権扱いを確認した近時の最判とか。信用金庫の商人性やら取立委任裏書による権利移転の範囲やら不当利得の時効期間やら、何だあの頃金に興味はないと言っていたのにと言いながら、往時の官舎さながらに1日3箱分は紫煙の立ちこめる散乱した部屋で、自分の分野の話に思わずのめり込んでいた。非常勤先の卒業生が既習で入った中大院にて商法学習はついて行けるとその前日嬉しいことを伝えに来て、その際も駒澤での法哲学会に出るよう民法教員に促されたと聞いたと話すと、驚きながらも理由を教えてくれ、やはりそこかしこで人や情報が繋がっているのを実感させられる。そしてこのいずれの機会でも伝えられたのが民法改正のスケジュールである。本当に実現するかと訝り本学でもそんな疑問を聞いたばかりだったため月曜の学生はともかく火曜の京大では少々驚き、仏独に言及しながら予想される異論やこれに対する仕上げ方の想定まで、畑違いの法哲学者が説明してくれた間接情報を頭にいれるのが精一杯。情報は伝わるところにのみ偏在していることを今更ながらに思い知らされた。けれど、万事言わずもがなだろう。私学はどこも同じだろうと慰められつつも翻り生き残りなる言葉を聞かない日のない我が毎日を思うにつけ、生き残って結局何がしたいのかと自他に尋ねたくなる気分にすらなる。

そんな折決まって思い出すのは、この9月に呼ばれて行った原発関係のADRに所属する本学OBの弁護士・事務局各2名の夕食会と、翌10月末にこれまたOB弁護士に促されて開いた法律相談会での各一刻である。前者の場所は御法川氏の次男で騒がれたコンビニのほど近く。時に夜明けの4時まで打合せがあるという機構内部の日常を皆溌剌と語るのを聞き、次は春にと再会を約して、名残り惜しくも幸せな気分で2次会を諦め一人その場を後にした。他方法律相談会では昔の学生が先生と呼ばれて依頼者の相談に真摯に対応し、他人の人生に降ってきた難局を助けようとしている。月に1度は開催したいとのこれまた嬉しい声が上がってきて、地元への恩返しという法律事務所の設立目的が、語るまでもなく共有されているのを実感する。何より彼らは誠実で、なおかつ母校を懐かしんでいる。70歳までどうしようかと言っている我ら金沢組が歩いているのはいつの間にか日暮れに近い道になっていた。世代交代である。教員冥利に尽きると思わずにはいられない。(H)

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