禅文化歴史博物館The Museum of Zen Culture and History

近代印刷関係資料 1.版木

1.明治時代の本学教科書を印刷した版木

1-1.大学開校の頃の教科書

駒澤大学の前身である曹洞宗専門学本校は明治8(1875)年に青松寺獅子窟内で開校し(翌年吉祥寺旃檀林に移転)、明治15(1882)年には麻布区北日ヶ窪に独立した校地を有する曹洞宗大学林専門学本校となりました。

曹洞宗立の僧侶教育機関として開校した本学では、開校当初の授業科目の多くは仏教・禅に関するものでした。明治9(1876)年の時間割を見ると、仏教書・禅籍がそのまま科目名となっていました。

曹洞宗大学林全図
曹洞宗大学林全図
明治時代前期の本学教科書
明治時代前期の教科書 本学図書館蔵
明治9年時間割表
明治9年時間割表

授業で使用する教科書は、本学内、もしくは版木を有する関係先において印刷を行いました。明治11年3月15日付の「試験科目購求伺」は、試験に使用するため、永平寺宛に『正法眼蔵』『永平廣録』『碧巌集種電鈔』の印刷・購入を願い出る文書です。

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明治11年3月15日付の「試験科目購求伺」

1-2.当館所蔵の版木類

当館では、約1,300点の江戸時代、明治時代に制作された版木を所蔵しています。これらは主に、明治時代に本学の教科書を印刷した版木と見られます。
当館が所蔵する版木類は以下の通りです。
『正法眼蔵』(328点)、『正法眼蔵辨註並調絃』(757点)、『妙經新註(妙法蓮華經不能語=指月禅師不能語)』(79点)、『拈評三百則(拈評三百則不能語)』(25点)、『心經止啼銭(退蔵螺蛤老人般若心經止啼銭)』『寶鏡三昧注』(10点)、『孝論』『参同契註』(12点)、『宗祖坐禅義(普顴坐禅儀箴不能語)』(10点)、『坐禅用心記不能語(洞谷開山坐禅用心記不能語)』(30点)、『金剛和解(金剛般若經和解不能語)』(12点)、『不能語履歴攝頌』(5点)、『指月法語(指月禅師假名法語)』(10点)、『拈古(眞歇和尚拈古)』(12点)、『義雲録輗軏(義雲和尚語録輗軏)』(24点)、『不能語(洞山大師玄中銘不能語)』(7点)、『光明蔵三昧』『不能語』ほか(18点)、その他(5点)。
当館所蔵の版木から明治時代に印刷された教科書は、本学図書館に所蔵されているものも多く、本学の歴史を伝える貴重な資料となっています。

1-3.明治時代の開版・出版事業の一例-『正法眼蔵辨註並調絃』版木-

当館が所蔵する版木の中で、最も多くの点数を誇るものが『正法眼蔵辨註並調絃』の版木であり、版木全体の半数以上を占めます。
『正法眼蔵辨註』は、江戸時代中期に天桂伝尊が著した、道元禅師『正法眼蔵』の注釈書です。江戸時代には『正法眼蔵』出版禁止令などもあり出版は適いませんでしたが、明治時代になり、久我環渓、大渓雪巌により開版・出版されました。

明治8年教部省に大渓雪巌が出版願を提出、明治14年に1巻から22巻の出版を完了し、明治17年久我環渓により版木が本学へ寄贈されました。

資料紹介動画「『正法眼蔵辨註』の版木」(禅博YouTubeチャンネル内)へ(外部リンク)

『正法眼蔵辨註』とその版木
『正法眼蔵辨註』(本学図書館蔵)とその版木(当館蔵)

 


1-4.木版印刷とは?

木版印刷とは、下絵をもとに版木に画像を彫り込み、この版木に顔料を塗り、和紙に顔料を摺り込んで画像を写す技術です。木版印刷の作業工程は、下絵を描く絵師、版木に画像を彫り込む彫師、版木から紙に印刷を行う摺師、と分業化されています。

当館では、平成22(2010)年度から、アダチ版画研究所に依頼し、『正法眼蔵辨註』版木を使用した摺り作業を行っています。毎年1冊のペースで作業を進め、2020年度までに『正法眼蔵辨註』の1~11巻(全22巻)の印刷を行っています。

『正法眼蔵辨註』巻一 版木 当館蔵
『正法眼蔵辨註』版木
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『正法眼蔵辨註』を印刷したもの
『正法眼蔵辨註』の摺り作業風景
当館での摺り作業風景

『正法眼蔵辨註』版木摺り作業(禅博YouTubeチャンネル内)へ(外部リンク)

関連リンク

木版印刷の解説:アダチ版画研究所ホームページへ (外部リンク)

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