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フェルマーの最終定理(サイモン・シン著; ⻘⽊薫訳)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2020.02.01

書名 「フェルマーの最終定理」
著者 サイモン・シン 
訳者 ⻘⽊ 薫
出版者 新潮社
出版年 2006年6⽉
請求番号 412/15
Kompass 書誌情報

皆さんは、中学数学で習う「三平⽅の定理」を覚えていますでしょうか。その定理は、「あらゆる直⾓三⾓形について、斜辺の⻑さをz、それ以外の⼆辺の⻑さをx, yとするならば、x2 + y2 = z2 が成り⽴つ」と主張します。三平⽅の定理は古代ギリシアの数学者ピタゴラスによって発⾒されたと⾔われています。そのため、⽅程式 x2 + y2 = z2 を満たす⾃然数の組 (x, y, z) は、ピタゴラスの三つ組み数と呼ばれます。例えば、x=3, y=4, z=5の組は上記の⽅程式を満たすので、ピタゴラスの三つ組み数です。また、x=3, y=4, z=5を整数倍した組(x=6, y=8, z=10など)も上記の⽅程式を満たすため、ピタゴラスの三つ組み数は無限に存在します(本書には、より興味深い証明が掲載されています)。

本題はここからです。本書のタイトルともなっている「フェルマーの最終定理」は、「3以上のあらゆる⾃然数nについて、xn + yn = zn を満たす⾃然数の組 (x, y, z) は存在しない」と主張します。仮にn=2であれば⽅程式を満たす三つ組み数は無限にあったのが、n>2になったとたんに⼀組も存在しないというのです。例えば、n=3として、x=6, y=8, z=9の組を考えてみると、63 + 83 = 216+ 512 = 728 < 729 = 93 となり、惜しくも⽅程式は満たされません。そもそもフェルマーの最終定理は、フランスの数学者ピエール・ド・フェルマーにより、17世紀に初めて提⽰されました。しかし、フェルマー⾃⾝はその定理に対する厳密な証明を与えていません。代わりに、「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余⽩が狭すぎるのでここに記すことはできない」という有名なメモを残しました。

フェルマーの最終定理が正しいということは、提⽰されてから約300年を経て、現オックスフォード⼤学教授のアンドリュー・ワイルズ⽒により証明されました。ワイルズ⽒の証明は100ページを超える論⽂(1995年に発表)にまとめられており、専⾨の数学者以外がその証明を完全に理解することは不可能でしょう。本書は、ワイルズ⽒がいかにしてフェルマーの最終定理を証明するに⾄ったかを、数学史やワイルズ⽒本⼈の⾔葉を交えながら、⾮常に分かりやすく解説しています。素数や虚数などの概念、数学的帰納法や背理法などのテクニックも登場しますので、⾼校数学の復習にもなると思います。フェルマーの最終定理が証明されるまでにどのようなドラマがあったのか、興味がある⼈はぜひ読んでみてください。

経済学部 准教授 ⻄村 健

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