令和5年度 入学式 学長式辞
令和5年度、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
駒澤大学を代表しまして、皆さんのご入学を心より歓迎いたします。
また、これまで支えてこられたご家族や関係者の皆様にも心よりお祝い申し上げます。
今年入学された皆さんは、コロナ禍という異例の日常の中で3年間の高校生活を送り、受験勉強を続け、合格されました。大変な努力の日々だったことでしょう。これまで培ってきた努力が実を結び、入学試験を見事に突破されたことに、大いに自信をもって欲しいと思います。
この4月から、マスク着用のルールが緩和となり、対面での授業やサークル活動がようやく元に戻ります。キャンパスは、すでに活気が戻っています。今振り返りますと、静まり返ったキャンパスで、教室に学生の姿はなく、合宿やサークル活動も封印されました。元の生活に戻ることができたことだけで、嬉しい気持ちが込み上げてきます。当たり前の生活ができることに、改めて感謝の気持ちが生まれます。
歴史を振り返れば、100年に一度程度繰り返されてきたウイルスと人類の闘いがありました。この3年間、世界の人々が新型コロナというウイルスと闘ったという共通の体験は、持続可能な社会の実現に向けて、同じ苦労を経験した地球市民の一人として、考え方を変えればプラスに働くのではないかと考えています。
さて、私が学長に就任しまして、今年で3年目に入りますが、この2年間、学長として注力してきたことが2つあります。
それは、今の日本が先進国の中で遅れをとってしまった分野です。
1つは、「デジタル化」です。スイスの国際経営開発研究所が5年前から発表している世界のデジタル競争力ランキングという指標があります。世界63の国や地域を対象に、デジタル技術の利活用能力を9つの項目で評価しています。ビジネスだけでなく、政府や社会における経済や社会変革の主要な推進力を示すものですが、日本は昨年2022年、主要63か国の中で、3年連続で順位を下げ、過去最低の29位となってしまいました。
総合ランキング上位の5カ国は、デンマーク、アメリカ、スウェーデン、シンガポール、スイスです。また、東アジアの国や地域をみると、韓国が8位、台湾が11位、中国が17位となりました。日本が最下位の項目は、「ビッグデータの活用・分析」「ビジネス上の俊敏性」「国際経験」の3つです。
これから皆さんは、本学で高度な知識を身につけることになります。本学で学ぶ専門分野が何であろうとも、デジタル革命を背景とする新しい社会の到来に直面しなければなりません。それぞれの専門分野を通して、将来、皆さんがどの様に世界に貢献できるのかを考えて欲しいと思います。
駒澤大学では、具体的に、授業の在り方、サークル活動の進め方、留学やキャリア教育の進め方に至るまで、創意と工夫を凝らして、新たな対応を実行し始めています。「デジタル技術」は、生きていく上で必須の「道具」です。デジタル化のメリット・デメリットを十分理解して、皆さんそれぞれが本学でこれから学ぶ学問の領域で、楽しく使える「道具」を主体的に遣いこなしてほしいと思います。世界共通の「道具」を使えば、世界中の学生と、様々な社会課題を共有することが可能になります。一気に視野が拡がるはずです。
もう1つは、「ダイバーシティ(多様性)」です。
2022年7月、世界経済フォーラムが世界各国の男女平等の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」を発表しました。この指数は、「経済」「教育」「健康」「政治」の4つの分野のデータから作成されます。日本は、146か国中116位で、先進国の中では最下位でした。アジア諸国の中では、タイが79位、韓国が99位、中国が102位と、ASEAN諸国より低い結果となりました。「ダイバーシティ(多様性)」とは、そもそもジェンダーという属性だけではありませんが、多様性の中で最も分かりやすい項目が先進国の中で最下位であることは、みなさん是非、問題意識として頭に入れて、4年間を過ごしてください。皆さんが卒業する4年後に、少しでもそれが解消できるように、私もアクションを起こし続けたいと思っています。
本学は、ダイバーシティ(多様性)の尊重による「個を生かす」大学を目指しています。これはSDGs(持続可能な開発目標)の達成や、共生社会の実現にもつながり、グローバル社会で生きていく上で不可欠な取り組みです。「デジタル化の推進」と「ダイバーシティの尊重」、この2つを意識して、皆さんそれぞれの専門分野をどうか深く掘り下げてください。
駒澤大学は、昨年開校140周年を迎えました。さらに歴史を遡れば、430年という長い歴史と豊かな伝統をもつ私立大学です。明治維新や戦後復興といった大きな局面を力強く乗り越え、教育・研究や社会貢献の弛まぬ努力や改革によって、時代に応じた大学教育のあるべき姿を究明してまいりました。私たちは、建学の理念と教育・研究の本質を見失うことなく、時代の要請にこたえてきたという自負心をもっています。
駒澤大学は、長期ビジョン「駒澤2030」として、「自他協創」を掲げています。
この造語は、建学の理念に基づく「自利・利他」(自利とは、自己の修行により得た功徳を自分だけが受け取ることいい、利他とは、自己の利益のためでなく、他の人々の救済のために尽くすことをいいます)を一言にまとめた「自他」と、人と人とをつなげるネットワークを活用し、革新的なアイデアを生み出す力を表現したビジネス用語である「協創」を繋げています。つまり、繋がりを大切にし、ともに社会変化を乗り越えるために、自己研鑽し続ける人材の育成を表現しています。多様なつながりの中で培われた広い視野と、自他への深い洞察により、いかなる状況下においても本質を見極め、人と人との思いの「繋がり」を駆使し、社会変化を乗り越えるための自己研鑽をし続け、卒業後も成長し続ける人材を育成することを目指しています。
入学生の皆さんが4年後に社会で活躍する将来を築けるように、教職員一丸となってサポートして参ります。
3年振りに取り戻した活気溢れるキャンパスで、昨年10月17日、新しい図書館も開館し、皆さんを迎える準備を整えています。思う存分、友人と語らい、新しい図書館で読書に耽っていただきたいと思います。今という時間は、刻々と移り行き二度と経験できない時間です。入学生の皆さんが、臆することなく、創意工夫と新たなチャレンジによって充実した実りある大学生活となることをお祈りして、私の式辞といたします。
本日は誠におめでとうございます。
令和5年4月8日
駒澤大学 学長 各務 洋子