令和元年度 9月学位記授与式(卒業式)理事長祝辞
本日ここに「令和元年度 9月学位記授与式」にあたり、晴れてご卒業される67人の皆さん、ご卒業おめでとうございます。またこの日を心待ちにし、長い間、ご子女の学業成就を物心両面にわたり、ご支援くださったご親族の皆さまに対し、ご来賓の関係者各位と共に教職員一同衷心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます。
卒業生の皆さん、本学での学生生活は如何でしたでしょうか。最初は長いと思っていた学生生活があっという間に過ぎてしまったのではないでしょうか。その間、大学の施設整備の為に工事中の期間も多々あって、ご迷惑をおかけしたことと思いますが、専攻学科の講義や演習、ゼミ、課外活動や部活動を通じて多くのことを体得し学ばれたことと存じます。
さて、皆さんはこれからいよいよ社会に出て、それぞれの分野でご活躍をされることとなりますが、くれぐれも体調管理には気をつけて、一度しかない人生を有意義に過ごしていただきたいと念願いたします。駒澤大学の建学の理念に「仏教の教義並びに曹洞宗立宗の精神に則り、学校教育を行う」とあり、皆さんも本学で仏教について学ばれたことと思います。仏教は、今から二千数百年前にインドで起こり、一千年の年月を経てシルクロード、中国大陸、朝鮮半島を渡り、海を越えて日本に伝えられました。
それから一千五百年近く経ちますが、仏教即ちお釈迦様(真ん中の仏様)の御教えは、智慧と慈悲とに定義されます。
智慧とは、《この世に存在するものは全てそれ相応の原因や条件によって起こり、単独で存在するものは何ひとつ無い。全てのものがお互いに支えあって存在している》という因縁生起の教えを体得することであります。つまり、生きていくためには、多くの人や物に生かされて生きているという事実をしっかりと認識することであります。
先日、関東地方を襲った台風15号は、千葉県を中心に各地に甚大な被害をもたらし、今でも電気や水のない不自由な生活を多くの方が強いられています。現代では、電気や水が無くては、人は生きていくことが困難であります。多くの人々が不自由な生活を強いられながら改めて電気や水の大切さを実感されていることと思います。
平成23(2011)年3月11日に起きた東日本大震災の後、《繋がり》ということが言われるようになりました。人間という字は「人の間」と書きますが、人間は、ご両親を始め、生まれてから一生の間、数えきれない多くの人々と繋がってご縁を持ち、人々や物に助けられて生きています。このような災害や事故に遭わない時でも、《お陰様で》の言葉の通り、毎日食べるものも身に着けるものも顔や名前も知らない多くの人々の手を経て私たちに届けられています。見えない力に支えられて私達は毎日を生き、生かされています。
そして、慈悲とは、その智慧の教えに基づき世の為、人の為に尽くすことであります。私達は、人や物に生かされて生きているのですから、自らも人や物を生かす生活をすることが肝要であります。近年は、自分さえよければ他人はどうなってもよい、という考え方を、人々が苦しんでいる災害時においてさえ持つ自分勝手な人もおりますが、本学を卒業される皆さんは、是非とも本学で学んだ智慧と慈悲の心を実践していただいて充実した人生を送っていただくようお願いし、はなはだ簡単ですが、お祝いの言葉といたします。
どうぞ本学で学んだことに自信を持って、社会へ、次の一歩へ旅立ってください。本日は誠におめでとうございます。
令和元年9月21日
学校法人駒澤大学
理事長 松原 道一