平成29年度 9月学位記授与式(卒業式)学長式辞
本日ここに、平成29年度駒澤大学・9月卒業式および法科大学院修了式を挙行するにあたり、一言式辞を申し述べます。
まずは、ご卒業・ご修了おめでとうございます。本学に入学以来、皆さんが、基礎から専門にわたる知識・技能、思考力・判断力・表現力、さらには問題にあたっての主体的な解決能力等々を身に付けられたことに対して、心より祝意を表するとともに、学位記を授与することにより、大学としてその能力と人格を保証し、証明したいと思います。
学士号・修士号の学位取得は、決して容易なことではありません。そのことは、他ならぬ皆さん一人ひとりが実感されていると思います。まさに、大学生活を通して注いだ努力の結晶であり、成長の証しです。入学時のご自分を振り返ってみてください。駒澤大学に所属し、学び、活動することに、不安と相半ばしつつも、夢と希望を抱いてスタートされたと思います。そして、進級を重ねる中で、さまざまな出来事を経験されたことでしょう。授業であれ、課外活動であれ、アルバイトであれ、それらの経験は、何らかの形で、人との「出会い」の上に成り立っているはずです。とりわけ学内における、友人、先輩、教師、職員等との出会いは、建学の理念に育まれた伝統的な「駒澤文化」の中での邂逅です。それ故、皆さんは、知らず知らずのうちに、本学の歴史が培ってきた文化力を修得し継承してきたと言えましょう。
ところで卒業という言葉は、英語でコメンスメント(commencement)と言います。「開始・スタート」という意味です。つまり、卒業は、人生の次のステージへの出発を意味しているのです。したがって、卒業はまた、「段階付け」を意味するグラデュエーション(graduation)でもあるわけです。そして、次なるステージ・段階へと皆さんを推し進める動力源こそ、本学で身に着けた教養であり専門的能力です。それらの財産を起動力として、皆さんは、新たな緒に就くことになります。初心にかえり、大学時代の経験・蓄積に自信を持ち、自分を信じ、各々の目標に向けて飛び立つよう念願します。
とはいえ、皆さんを待ち受ける社会は、安定的で予測可能な社会からはほど遠いのが現実と言わざるを得ません。国内における少子高齢化、厳しい格差社会、産業構造の激変、国外に目をやれば、経済のグローバル化、宗教や民族の対立、自国優先主義、さらに地球全体を見渡せば、地球温暖化などに起因する自然環境の急速な変化等々、何一つとして安定しているものはないでしょう。
しかし、このような時代に生きることで、夢を捨ててはなりません。ギリシャ神話に出てくる、かの「パンドラの箱」の話に想いを馳せてください。あらゆる災いを詰めた箱(壺)をパンドラが開けると、地上にそれらの災いが拡散してしまい、慌てて蓋を閉めたところ、箱には、希望だけが残っていたのです。箱の中に何故災いと希望が入り混じっていたかの解釈は諸説ありますが、ここでは、災いに屈せず生きるために、神が地上世界に希望を与えてくれたものと受け止めておきます。そう考えれば、希望は、人類に等しく施与された神の恵みであり、智恵であるということができましょう。
最後に、皆さんが本学を巣立ったのち、さまざまな経験を積み重ねて行く過程で、これまで述べてきたような夢と希望を持ち続け、各自の目指す道を見定め、弛まず漸進されることを祈念して、私の式辞を結びたいと思います。改めて、ご卒業おめでとうございます。
平成29年9月16日
駒澤大学学長
長谷部 八朗