令和元年度 9月法科大学院入学式 理事長祝辞
駒澤大学法科大学院へのご入学おめでとうございます。皆さんは、難関中の難関である司法試験合格を目標に高度な法律の学問を修める為に本学の法科大学院に入学されたものと存じます。司法試験に合格する為には並々ならぬ努力精進が大切でありますが、是非とも初心を忘れずに頑張ってください。
本学の法科大学院教授であり、副学長である日笠完治先生の著書『憲法がわかった』(法学書院)の初めに以下のようなことが書かれています。
「多くの人に憲法好きになってもらいたいと思います。私自身は、憲法が大好きです。憲法を学び、人間や社会に対する考え方を磨いてきたつもりです。また、憲法の中には人類が共存し、平和に協力して、あらゆる人々の人間的幸福を達成するための必要不可欠な考え方が隠されていると感じているからです」。
私は、憲法に疎い方ですが、「人類が共存し平和に協力してあらゆる人々の人間的幸福を達成する」という点においては、本学が掲げる建学の理念に示されている《仏教の教義》と相通じるものがあります。大本山永平寺をお開きになった道元禅師様の書物『正法眼蔵』の御教えを表した「修証義」という経典の中に《菩提心を起こすというは己れ未だわたらざる前に一切衆生をわたさんと発願し営むなり》とあります。
みんなの幸せを願って、その目的に向かって実行することを、利他行と言いますが、人はともすると《愚人おもわくは、利他を先とせば自らが利省かれぬべし》とあるように人の幸せを優先すると自らが損をすると思いがちですが、《しかには非ざるなり》(そうではない)と道元禅師はお示しになっています。どうぞ、皆さんもそのような御教えを肝に銘じて学んでください。
日笠先生の著書にはまた、このように書かれています。「憲法も、歴史的に見れば、人類の英知が創造した素晴らしい宝物であり、先人から私達への贈り物なのです」。当にお釈迦様がお示しになった仏教、仏法と同じであります。どうぞ皆さん、今以上に法律の学問好きになってこの贈り物の勉学に励み、そして司法試験に合格し、社会の発展に尽力していただきたいと念願しお祝いの言葉といたします。本日は誠におめでとうございます。
令和元年9月21日
学校法人駒澤大学
理事長 松原 道一