広報紙『学園通信』314号(2014年10月15日号)学長メッセージ

Date:2014.10.15 その他

駒澤大学の伝統と文化

学長 廣瀬 良弘

駒澤大学 学長 廣瀬 良弘東京が2020年に再度のオリンピック誘致に成功したこともあり、「おもてなし」「和の食」などが話題となり、日本文化は「クールジャパン」とも表現され、世界から注目を集めています。この、日本文化の底流には、鎌倉・室町時代以降に育まれてきた禅の精神のうねりがあり、駒澤大学の伝統・文化もこの禅の精神の広がりの中にあります。

道元禅師はおよそ800年前に中国に渡り禅を伝え、山深い越前国(福井県)の大自然の中に永平寺を構えて、「只管打坐」(ひたすら打ち坐る)、「修証一等」(坐禅と悟りは一体)の禅を唱え、4代目の瑩山禅師は能登国(石川県)に總持寺を構え、「平常心是道」(いつも平常心で)「茶に逢うては茶を喫し、飯に逢うては飯を喫す」(喫茶の時には喫茶に徹し、食事のときには食事を)という日常茶飯の禅を唱え、その門弟達は全国展開を遂げました。在地の武士や有力農民などに受容され、乱世の中で展開し、関東甲信越地方でも長尾(後の上杉)・武田・三田・小山田・太田氏などに受容されていきました。

この流れの中で太田道灌は江戸城を築き、吉祥寺を建て(550年前)、徳川家康が江戸城に入って3年目に堀の外に出た吉祥寺の中に学寮(のちの旃檀林)ができました(420年前)。江戸時代前半のころの振袖火事で駒込に移り、明治15年に麻布(今の六本木ヒルズのあたり)に近代的な大学が開校されました。132年前のことです。そして、駒沢の地に移転して、101年が経過しました。禅宗の全国展開と全国に21万人の同窓生が存在し、本学に16,000人の学生が在学することとは無縁ではないのです。本学はその禅の伝統・文化を大切にし、禅研究教育の拠点大学として、世界に発信して行かなければなりません。