広報誌『Link』 Vol.4(2014年5月号)学長メッセージ

Date:2014.05.01 その他

「行学一如」の精神でアクティブな学の実践をめざす

学長 廣瀬 良弘

修行と悟りは一体
道元禅師の教え

駒澤大学 学長 廣瀬 良弘開校から130年余り、前身である「学林」に遡れば420年以上に及ぶ歴史と伝統を持つ駒澤大学は、仏教の教えと禅の精神にもとづいた教育をめざして、建学の理念を「行学一如(ぎょうがくいちにょ)」という言葉で表してきました。自己形成をめざす「行」と学問研究の「学」とは一体であるということです。
「行学一如」というのは曹洞宗の開祖である道元禅師の「修証一等(しゅしょういっとう)(修証一如)」という言葉に由来しています。「修(修行)」と「証(悟り)」は一体であるという考え方です。
禅というと、厳しい坐禅修行に耐えながら立派な人間になり、悟りの世界へと上り詰めていくと思われがちですが、道元禅師はそうは言われません。坐禅とは悟りのための手段や道具ではなく、坐禅している姿そのものがすでに仏であり、坐禅という修行の中に悟りがある、と述べています。

アクティブに学ぶ「今」が大事

「修証一等」を大学の理念として表した言葉が「行学一如」です。大学では「学」が上で、行動したり実践したりする「行」は軽んじていいかというとそうではなく、それらは一体です。勉強していることそれ自体が「行」なのです。学んだことをすぐ図書館へ行って確かめる。あるいは、書籍に載っていることは本当なのかと市場調査を行ってみる。このように「アクティブな学」が「行学一如」です。
しかも大切なのはアクティブに学んでいる「今」のこのときです。はるか彼方にある完成された未来の自分をめざすのもすばらしいことに違いありませんが、一生懸命になって何かに取り組み、生きている今の姿こそが輝いているのであり、尊いのです。

互いに信頼し、思いやる「信誠敬愛」の大切さ

建学の理念は「行学一如」ですが、実践徳目として「信誠敬愛」という言葉があります。
「信」は相互信頼、「誠」は誠心誠意、「敬」はお互いに尊敬し合う、「愛」は仏教にある慈愛、思いやり、慈しみという意味です。
そして、道元禅師の大切な言葉に「愛語」があります。愛語とは、人に会ったときに慈悲の心を起こしていたわりの言葉をかけることで、「面と向かって愛語を聞けば、聞いた人は表情がほころんで心が楽しくなる。人を介して間接的に聞いた場合は、その言葉は肝に銘じられて、魂にまで響く」と言われます。
「行学一如」と「信誠敬愛」、いずれも本学の教育と研究に欠かせない言葉であり、理念
です。この二つを基本に、駒澤大学の人づくりを行っていきたいと考えています。

どのようなときも主体性を持って
活躍できる人材を育成

科学技術がめざましく発展してきた現代ではありますが、進歩に伴ってさまざまなひずみが起きているのも事実です。あるいはまた、技術革新に支えられて進展するグローバリゼーションは、すべての人々を豊かにするかというと必ずしもそうではなく、国と国、人と人との間に格差をつくり出しています。そのような中でも勝ち組・負け組に左右されず、主体性を持って活躍できる人材を育んでいかねばなりません。
「行学一如」の理念にもとづく「アクティブな学」とはそのためにこそあります。
禅宗には「随処に主となれ」という言葉があります。これは、人のうしろからついていけばいいというのではなく、自分が主人公になってできる仕事は何かを考え、見つけ、実行していくことをいいます。それは、全員に社長になれといっているわけではありません。どのような仕事、場所であっても主体性を持って行動する人間になってほしいということにほかなりません。

開校130周年を記念して
2017年完成予定で新棟を計画

本学の今年度の取り組みとしては、「130周年記念棟」建設の本格的な準備があります。2017年12月の完成予定で、現在、鋭意、設計に入っているところです。9階(一部4階)建てで大小の講義室、最新のIT機器を装備したPC教室、広々とした学生食堂など、学生中心の機能的な建物構想となっており、緑豊かな駒沢オリンピック公園に接して、低層棟屋上にルーフテラスが設置され、完成すれば明るく、さわやかなキャンパスが実現することでしょう。
また、やはり禅の大学ですので、全学生が一度は坐禅を体験できるようにしたいと思っています。そのほかにも仏教の教えにもとづく大学ならではの取り組みにより、思いやりや慈しみを育み、学生一人ひとりを生活も含めて支援しつつ、最高の学問を伝え、日本に、そして世界に貢献する大学にしていきたいと考えています。