世界を動かす台湾の会社 TSMC ってなんだ? 九州産業大学名誉教授朝元先生が講義

日本の7-9月実質GDPが、年率3%減と報じられました。コロナや緊急事態宣言が影響しているだけではありません。

自動車やスマートフォン、ゲーム機になくてはならない「半導体」がなかったから売ろうにも売れなかったわけです。
この半導体について、台湾のTSMCが熊本に工場をつくることも今月報じられました。いったい今何が起きているのでしょうか。

そこで2021年11月19日のベンチャー企業論Bでは、台湾企業の研究で知られる九州産業大学名誉教授 朝元 照雄 先生から「半導体の世界的動向とTSMC創業者張忠謀」というタイトルでお話をいただきました。

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今話題のTSMCは張忠謀(モリス・チャン)によって創業されました。講義では、張忠謀の創業前からの経緯から、創業後どのように同社を発展させたのかが紹介されました。
半導体受託製造(ファウンドリ)の市場シェア約55%の世界最大の企業を構築したことや、時価総額がトヨタ自動車の2倍であることなどは、有名な話でありながら、あらためて驚かされました。

次に半導体産業の概要が説明されました。半導体産業は単一の産業でなく、IDM、ファブレス、ファウンドリ、封止・検査、IPコアとEDA、メモリーなどを含んだものです。それぞれについて説明がありましたが、TSMCは製造のみを行うファウンドリにあたります。

ムーアの法則の極限に迫る世界において、半導体市場は今後も拡大していきます。当然半導体産業をめぐる問題も多く起こります。
コロナ禍で自動車産業は不況と予測して車載半導体の受注を減らしました。需要が回復してきたときに半導体が不足していたため、世界中の自動車工場が操業停止になりました。
従来型の必要なだけつくるという発想から安全在庫に対する定義の考え方が変わってきました。

2020年には、コロナ以外にも水不足で台湾半導体の生産に影響がありました。
毎年最低一度は来る台風が来ませんでした。水を大量に使用する半導体製造には大きな影響がありました。

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半導体は、「戦略的物資」であり様々な用途に利用されます。当然政治に左右されます。
受講者からは、「TSMCによる熊本工場の新設は、供給不足への対策以外にも、地政学的リスクを分散させる目的もあるのでしょうか?」といった質問がありました。
アリゾナ工場や熊本工場は政府が誘致したものであり、政治経済と密接につながった問題であることが説明されました。

TSMCを通して、世界経済、政治、天候の問題、企業経営のあり様など、様々なことを学ぶ時間となりました。

どうもありがとうございました。

(H.O.)