ゼミ探訪:サービス労働はどうなる?
今回は経営労務論ゼミの活動を紹介します。
人手不足が叫ばれる中、サービス業の賃金はなかなか上昇しない。2年後の東京オリンピックを控え、手厚いことが特徴の日本のおもてなし文化、サービス労働は今後どうなるか。このテーマを考えるべく、2年ゼミ(20期生)では、サービス労働に関する本を集中的に読みました。
1冊目は、矢部輝夫[2013]『奇跡の職場』あさ出版。
テレビでも放映されすっかり有名になった新幹線車内清掃会社のケース。列車折り返しのたった7分の停車時間でどうすれば的確に清掃業務を完遂できるのか研究しました。
榎本博明[2017]『「おもてなし」という残酷社会』平凡社新書。
この本では、過剰なお客様扱いが求められる職場で、従業員が感情労働を強いられ、ストレスをため込んでいる現状を認識しました。
締めくくりは、フランセス・フレイ、アン・モリス[2013]『ハーバード・ビジネススクールが教える 顧客サービス戦略』日経BP社。
アメリカ企業の事例から、サービス戦略に成功している企業は実は全方向的なサービスを行っているわけではなく、裏打ちされた計画に基づき焦点を絞ったサービス、それに向けた人材確保、人材管理が行っていることを学びました。
3冊の分析から、日本のサービス労働を持続可能なものにするには、顧客に理解、同意を求めながらサービスを絞っていくようなスタイルが今後重要であろうという意見が多数を占めました。一方で、AI導入により省力化が進み、サービス労働も高級なものと単純なものへと二極化し、各業界の提供するサービスの質も二極化の方向へシフトしていくだろうと予測しました。