いのちをいただく みいちゃんがお肉になる日(原案:坂本義喜、作:内田美智子、絵:魚戸おさむとゆかいななかまたち)
Date:2019.03.01
書名 「いのちをいただく : みいちゃんがお肉になる日 : 絵本」
著者 原案:坂本義喜、作:内田美智子、絵:魚戸おさむとゆかいななかまたち
出版者 講談社
出版年 2013年12月
ある日、帰宅早々夫から"すぐ読めるから、感想聞かせて"と、突然絵本を手渡されました。正直疲れていましたが、絵本なので軽い気持ちで読み進めていくと、そのうち涙が止まらなくなり、夫への感想は言葉にならず、嗚咽でした。
内容は、食肉解体作業員の実際の体験で、この体験が助産師と漫画家の二人の心を動かし、絵本として出版されました。孫にお年玉をあげるには、牛の「みいちゃん」にお肉になってもらわなければならないおじいさんの辛さ、ずっと一緒に育ってきたみいちゃんとの別れを惜しむ女の子、そういうみいちゃんを解(牛や豚を殺すこと)かなければならないしのぶくんのお父さんの葛藤、そして先生に諭され、お父さんの仕事の「すごさ」に気づき、逞しく成長していくしのぶくん、解かれるときにこぼれ落ちるみいちゃんの涙・・・。文字と絵の情景描写が一つになって感動せずにはいられません。
私たち人間は、生きるために肉や魚をいただきますが、こうなる前は、私たち同様に「いのち」ある牛であり、泳いでいる魚でした。自明のことなので普段あまり考えもしませんが、この絵本によって、私たちは、動物の「いのち」をいただいて生きてゆくことができることに改めて気づかされます。そういった意味で、「いのち」を学ぶこれ以上の教材はないのではないでしょうか。
一般的に、絵本は子どもの読みものと思われがちです。ちなみに本書は「小学初級から」と記されています。しかし、大人のみなさんにも是非読んでいただきたいと思います、短時間で読めますから。絵本を読んで一週間後、久しぶりに鉄板焼きへ行く機会がありました。私も合掌しながら、女の子のようにみいちゃんに"ありがとう"と言って残さず美味しくいただきました。
文学部 教授 茨木 博子