2024年問題に直面する物流業界の経営と労働

 二年次以上を対象とする専門科目「経営労務論」の授業では、去る10月30日に「2024年問題に直面する物流業界の経営と労働」と題するシンポジウムを開催しました。ゲストは株式会社canuu代表取締役 濱田崇裕氏、一宮運輸株式会社取締役 常務執行役員 犬山昌克氏、京葉流通倉庫株式会社 執行役員 宮之原崇氏、マルト便運輸倉庫株式会社 代表取締役社長卜部弘嵩様の4名でした。

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 濱田氏がコーディネーターとなり、他の3名の経営者に対して、さまざまな問いが投げかけられました。その内容を一部紹介すると、自己紹介、学生時代の過ごし方にはじまり、物流業界で働く理由やその魅力、今の会社を選び今のポジションに至った経緯、新卒採用と入社後のキャリア形成、物流における2024年問題について、人手不足や燃料費高騰への対応、コミュニケーション能力はどの程度のレベルでなぜ求められるのか、人手不足に対応するためにDXがどれくらい導入されているのか、職場での髪型やファッションの許容度、パワハラ防止に配慮することで経営者としてやりづらいと感じる瞬間があるか、働くことの目的は何か、と実に多岐に渡るテーマでした。会場では参加学生からリアルタイムで質問を受け付け、回答することができるシステムを活用し、受講生が聞いてみたかった企業の方針、経営者のホンネをさまざまな立場の方から具体的に答えていただくことができ、参加者は熱心に耳を傾けていました。

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 物流業界の女性の働きやすさについては、同席していた女性社員の宮道りん氏(一宮運輸株式会社営業本部所属)が登壇しました。男性が多い職場において女性社員が孤立せず、女性が意見を言いやすい環境の整備が行われている、という社員の生の声を伝えてくださいました。

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犬山昌克氏に寄せられた感想の一部を紹介します。

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●人からどう思われるのかはとても大事なんです、といった言葉がすごく刺さりました。
●最後のスピーチで触れられたアントニオ猪木さんの「行けば分かるさ!」という言葉には、挑戦することの大切さや未知の世界に飛び込む勇気が込められていると感じました。
●部下の人に「営業では良くも悪くも爪痕を残してこい」とおっしゃっていたので、私もインターンでは良い爪痕を残せるように頑張ろうと思いました。

宮之原崇氏に寄せられた感想の一部を紹介します。

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●「気配り・目配り・お節介」、声を掛け合う・配慮し合うということを意識しておられ、近年問題のハラスメントをみんなで無くそうというお互いを受け入れ尊重する雰囲気が職場をより良いものにしていくのだという点に共感しました。
●昇進するには思ったことを言う、というのが凄いと思いました。
●物流業界の新人教育制度が非常に体系化されていることに初めて知りました。

卜部弘嵩氏に寄せられた感想の一部を紹介します(卜部氏はK-1 WORLD GPスーパーフェザー級元王座です)。

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●「私自ら現場や営業にも顔を出している。そうすることで、社員の様子を自ら把握することができ、問題の早期発見にもつながる」という取り組みを聞くことは、働きやすい環境づくりにやはり欠かせないことだ、と改めて感じました。
●格闘技をやっていた時も今の仕事も同様なプレッシャーと意義を感じると聞き、感動しました。
●セカンドライフの話を選手時代にしていたと聞いて、やはり世界王者級でも今後の人生が確約されていないのを聞いてスポーツは難しい世界だと改めて感じました。

濱田崇裕氏に寄せられた感想の一部を紹介します。

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●最後におっしゃっていた「物流は1人では完結しない」ということが答えだと思いました。
●組織運営を円滑に進めるためにはコミュニケーションが必要という意見にはとても賛同しました。
●会話を回す力がすごくてコネクションが広いだろうなと感じました。

物流業界についての感想の一部を紹介します。

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●3Kのイメージが強く、男性社会のイメージが強かったが、女性社員の視点も聞けて今後の就職活動に役立てられると感じました。
●人手不足や人件費や燃料費などの費用の増加、ハラスメントなど様々な問題と直面している中で、柔軟に対応して、この問題を乗り越えようとする姿が素晴らしいと思いました。
●消費者側から見えないようなところでも最終的に消費者への負担を減らせるような企業努力を、しっかりと上の立場の人が率先して取り組みを進めているということがわかって、少し感動しました。
●今の問題としては人手不足やドライバーの残業代などがあるとおっしゃっていましたが、私たち若い世代にその問題を知らせていくことが必要だと考えました。
●女性に対して与える役割であったり、平等さを追求した職場環境を作り上げることは業界を問わず大切になってきている会社の要素の一つなんだなと改めて感じました。
●失礼ながら地味なイメージがありましたが、社会にとって必要不可欠なインフラであり、繋がりが重要な業界であることがわかりました。
●人手不足や燃料費の高騰に対しての質問で、ロボットや自動化、AIの導入をして対応しているとおっしゃっていたのが印象に残りました。

【担当教員から】

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 就職氷河期世代の働き方、海外赴任の大変さ、職種転換、ドライバーの逼迫問題、物流業界の付加価値の向上、空車率低下に向けた取り組み、適正価格の追及、人手不足に対応するための派遣会社の設立・活用やM&A、ロボット化、スポット人材の活用、コミュニケーション能力、女性の管理職登用、非正規従業員の正社員転換、希望配属制度、公的資格取得への会社の支援、ハラスメント対策、等。
 経営労務論が研究テーマにしているトピックスが数多く出てきて、座学とリアルの職場を結びつけて考える貴重な機会が得られたと思います。
 授業はただ単位を揃えるだけが目的ではありません。毎日の講義において、予想しなかった「出会い」や「気付き」が得られることもあります。経営学という学問特性を活かして、日々アンテナを張っておきましょう。皆さんの将来に繋がると思います。

(H.K.)