薬物・非行からの再生ー渡邊洋次郎様から3度目のご講演
「企業と社会」の授業は経営学部の専門科目ですが、他学部の学生も受講できて、200人以上受講している通年科目です。今年度で3回目となりますが、『下手くそやけどなんとか生きてるねん。――薬物・アルコール依存症からのリカバリー』(現代書館)の筆者である渡邊洋次郎様(48歳)のご講演が、2023年11月24日(金曜日1時限)にありました。渡邊様は『渡邊洋次郎対談集 弱さでつながり社会を変える』を2023年12月に刊行されてますが、多くの著名人との対談を重ねてきました。今年度も大阪からご講演のために本学に来られました。
経営学で人間関係論の理論を作ったのはソーシャル・ワーカーのM.P.フォレットでした。彼女の統合の哲学は大変に有名で、また人権やinclusionがSDGsの観点からも重視されています。ご講演には人間関係の理解を深める意義もありました。
発達障害的な傾向もあった小学校時代、そして自己肯定感がない中で、自傷行為を重ねた中学時代の話もありました。それは友人たちが高校に進学する中で、自分の将来への不安感からだったようです。
必要以上に職場でお酒を飲み始めたのは19-20歳のころでした。 お酒を求めた窃盗で警察に捕まり、アルコール依存症といわれて、警察から精神科を紹介されました。精神病院への入院、逃亡を繰り返す人生だったようです。
30歳から刑務所で暮らしました。雑居房から独房の中に移され、自身を見つめる中で、はじめて自分が依存症であることを客観的に認めることが出来ました。
33歳に刑務所を出てから、現在に至る再生の人生がようやくスタートしました。その中で海外の支援団体とのネットワークも広がりました。ニューヨークで国連を訪問し、ユダヤ人家庭からホロコーストを知り、学ぶことの意義にも視野が広がりました。
学生からの質疑応答にも丁寧に真摯に答えてもらいました。聴講した学生にとっては、他者の貴重な人生から自分の人生を見つめなおす得難いひと時でした。渡邊様、今回も貴重なご講演ありがとうございました。
以下、経営学部3年生の感想文を掲載します。
「今回はアルコール依存症についてのゲストスピーカーの人に来てもらって講義を受けました。僕の中でもアルコール依存症というのはお酒を飲んで暴れちゃうとかイメージしていました。シンナーでの薬物依存。司法での裁き。想像を超えるような体験をされていて驚きが隠せませんでした。ゲストスピーカーの生い立ちや幼少の時の苦悩がひしひしと伝わってきました。自分のアイデンティティを失って人格が崩壊し、自分を殺すか人を殺すか。その言葉は自分の中ですごい衝撃でした。依存症になってそんなになってしまうこと。とても怖いと思いました。ですが今は更生し、いろいろなとこでその経験を活かし、依存症の人へのサポートを続ける。そういうことができる素晴らしい人だと思いました。」
(M.M.)