第8回学生シンポジウムに経営学部から14チームが参加(後編)
11月25日(土)実施の学生シンポジウム、本日は後編の村山ゼミ、小野瀬ゼミ、齋藤ゼミ、鹿嶋ゼミの計7チームの発表の様子をお伝えします。前回分はこちら。
8)村山ゼミ
【研究テーマ】 フードロスの問題削減
SDGsとしてたくさんの対策を行なっている中でも食品ロスに着目し、SDGs12 の目標である、つくる責任つかう責任に焦点をあて日本におけるフードロス等の食品の問題を解決することを目的した企業 「クラダシ」 を見つけました。そして、クラダシ様にインタビュー等を行い、その企業の目的や実績等を聞いたうえでその紹介とそれによって考えられる食料の問題の解決について研究しました。
【参加学生の感想】
4年生になり、授業がほとんどない中で、ゼミ生同士で協力し学びを深めることができてよかった。企業を訪問したり、学生間でコミュニケーションをとりプロジェクトを進めたり、他のゼミから刺激を受けたり貴重な経験を積むことができた。参加して良かった。
9)小野瀬ゼミ
【研究テーマ】 ACP「人生会議」
小野瀬ゼミは今年度、「ACP」をテーマに研究を行いました。ACPとは人生の最終段階における医療・ケアについて、ご利用者様と医療・ケアチーム、ご家族が繰り返し話し合う取り組みのことを指します。このACPに対する理解を深めるために、現場で働いている医師の方に講義を行っていただきました。これらから得た知識や考えをもとに小野瀬ゼミではゼミ生それぞれが啓発ポスターの制作を行いました。何枚かの作品は世田谷区との協議の上、実際に使用される予定です。
【参加学生の感想】
ACPの知名度が少ないことから、今回のポスター制作ではACPの存在を学生シンポジウムの参加者に知って理解してもらうことをテーマに作品を制作しました。そのため文字を少なくイラストやインフォグラフィックなどを多くしました。また情報を最低限にしてシンプルでデザイン要素を大きくしたポスターにしました。
他ゼミさんの研究内容について知ったり交流する機会は少ないのでとても意味のあるイベントになったと思います。
10)齋藤ゼミ①
【研究テーマ】伝統産業の今後について
日本の重要な歴史的価値である伝統的工芸品。近年、伝統産業の生産高が減少し、産業として衰退しつつある。衰退の背景には需要低迷や後継者不足問題などがあると考えられるが、工場や機械で製造される一般的な工業製品と異なり、伝統工芸品は一度途絶えてしまうと再生不可能となり、文化的にみて大きな損失をもたらす。我々は伝統産業を長期的に維持発展させるためには何が必要なのか、実証的に検討した。
まず回帰分析によると、伝統産業の生産高や従業員数は、景気に大きく左右されることがわかった。このことは、伝統産業が短期の景気に左右されることを意味するが、現状では国や自治体から景気動向とは無関係に一定の補助金が投じられている。伝統産業が短期の景気に左右されないために、景気動向に見合った補助金の投入が必要であると考える。
同時に、フィールドワークから、伝統産業自身の改革も必要であると考えた。「江戸指物」を作成する工房では古くから、主にタンスなどの大きな家具・調度品などの価格帯の高い工芸品を作成されていたが、近年現代のニーズに合わせ、スマホスタンドや手鏡、髪飾りやネクタイなど、小物の雑貨を作成し、価格帯も低めになっている。また、「江戸切子」のカップを使用してコーヒーを提供するカフェもある。このように、伝統工芸職人や工房も現代のニーズに合わせようと、従来の伝統的工芸品に「今っぽさ」を組み合わせ、営んでいることが分かった。だが新製品開発や海外進出、SNS を使ったマーケティングなどの点で改革の余地があるとの印象も持った。
以上から、伝統産業の長期的な維持発展のためには、1 不況期に適切な補助金を支給すること、2 伝統産業自身もまた時代のニーズに合った新たな製品づくりやマーケティングを行うこと、が必要であると考える。
11)齋藤ゼミ②
【研究テーマ】サブスク時代の波に飲み込まれつつあるテレビ業界の課題と戦略
スマホなどの普及により、従来の地上波テレビの需要が大きく減っている。初めにテレビ業界全体の経営動向を調べ、テレビ局の中でキー局より地方テレビ局は今後、厳しい状況に置かれるのではないかという仮説を立て、地方テレビ局に焦点を当てて今後のテレビ局の経営戦略を考える。まず、総務省からのデータを基に年代ごとの平均視聴割合や平均利用時間を2016年と2020年で比較し、テレビへの接触が全体的に減っていることを証明する。次に、NHK放送文化研究所世論調査部によるアンケート調査「日本とテレビ調査、2015」と、私たちが独自に行った駒澤大学の学生を対象にしたアンケート調査を分析することで、テレビを見なくなった人々の属性(年齢、性別、地域など)や視聴しなくなった要因などをデータ分析により明らかにする。
データ分析として、私たちは、テレビを見なくなった理由として人口やテレビ局の数、高齢化率、スマホの普及率の 4 つの要因が挙げられるのではないかと仮定し、回帰分析を行う。そして、分析結果から分かった予想収入と実際の売上高を比較することで要因を明らかにする。さらにケーススタディとして、地方民放の"テレビ広島"と、独立協の"テレビ埼玉"に取材を行い地方テレビ局が抱える問題や戦略を直接インタビューすることにより具体的な現場の状況などを調査した。
以上の分析結果を踏まえ、地方テレビの現状や課題を把握し、今後テレビ業界が存続・発展していくための解決策を提案する。
12)齋藤ゼミ③
【研究テーマ】ブライダル業界の現状と発展
本研究では、結婚に対する人々の意識変化やブライダル業界の市場構造などを分析することで、ブライダル産業が抱える課題を明らかにし、産業が活性化するための今後の戦略を検討する。
ブライダル業界は需要が大きく低下している。2000年に2,500億円程度だった結婚式場業の売上高は2014年に1,500億円程度に落ち込み、この間、結婚式場業の従業員数も23,000人程度から17,000人程度に大きく減少した。こうした背景に少子化・非婚化・晩婚化があることは言うまでもないが、結婚はするものの挙式をしないカップルが増加していることもまた一つの要因である。たとえばコロナ禍以前のイベント状況のデータを見ると、約4分の1のカップルがウェディングパーティを実施していない。そこで本研究では、結婚はするものの挙式をしない人々に焦点を当て、その要因を検討することで、ブライダル業界が活性化するための戦略を検討した。
まず、どのような挙式しないカップルの属性を検討するため、〔「第7回結婚に関する意識調査、2007」(日本結婚相手紹介サービス協議会)〕の個票データで回帰分析を行った。その結果、挙式の有無の決定要因として、結婚時の年齢や金銭的背景、居住地、挙式への意識などがあることが判明した。またデータ包絡分析法(DEA)を用いてブライダル企業の効率性を計測した。さらに効率的な企業と非効率的な企業それぞれについてケース・スタディを行い、ブライダル業界における具体的な取り組みを調査した。たとえばスマ婚という企業では、1.5次会スタイルという、友人などを呼び、レストランやカフェ、ホテルなどでパーティを行う方式の披露宴を取り扱っている。またエスクリやアンカンシエルという企業では、作品とのコラボレーションをしたウェディングプランを用意し、作品をモチーフにした挙式を行うという取り組みをしている。上野精養軒でのインタビューでは、ブライダル業界における結婚情報誌ゼクシィの役割や、結婚式が個人の意向のみならずその時代を反映するイベントであるとの話を伺った。
これらの分析・調査から、少子化・非婚化・晩婚化のなかでブライダル業界が活性化するための具体的な戦略を提案する。
13)鹿嶋ゼミ①
【研究テーマ】働きがいを求めて
SDGs の Goal 5、Goal 14、Goal 8 に関連して直面している課題について考察した。 具体的にはSDGs(持続可能な開発目標)の 17 のゴールの中の<ゴール5:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行うこと>、<ゴール14: 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用すること>、< ゴール 8:包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進すること>である。
まず、フェミニズムのテーマから男女賃金格差と男女雇用格差の問題を扱った。日本におけるフェミニズム研究は、上野千鶴子を代表した団塊の世代から鈴木涼美のバブル世代までさまざまであるが、今回は日本における女性の社会的地位と女性のおける職場のやりがい問題に注目した。日本社会には男女間の賃金格差が依然として存在しており、その一因には女性のキャリア途中での離職やパートタイム労働への偏りがある。男女を問わず、労働者がやりがいと充実感を持つことは、生産性を高めるためだけではなく、労働者の働く環境や働き方に対する満足度、そして誇りという仕事のプライドに関わっている。
もう一つ注目したのは福島の原発処理水問題である。漁業労働者の職場である海とやりがいに関して、処理水排出は経済的考慮の面で注目されたが、日本の漁業者の生業への影響が大きいことを指摘した。実際に福島第一原発の付近を訪問し考察したゼミ生の一人は、地元の農民と反発していた漁業者にとって、科学的な安全性ではなく、処理水放出における社会的影響が自分の生きがいに関わってくること、政府への信頼感の低下が仕事のやりがいを感じる障害となっている点を主張した。
これらの課題を解決するために、政府、社会と企業、そして我々アカデミアはどう対処すべきか、マルクス主義フェミニズムとマルクス経済学の視点で研究を行った。
【参加学生の感想】
SDGsから働きがいへの転換は、新しい発想を広げてくれるものだった。他ゼミの方々からの感想をいただき、議論を深めることができたことは素晴らしかった。しかし、討論をした結果から行動に移すことができるかが問題であると考える。実際に学んだことを意識して次に何を求めるかが重要である。
14)鹿嶋ゼミ②
【研究テーマ】実労働時間の変化が労働者の働きがいに与える影響
私たちのグループは、最近の労働問題についてテーマ選定を進めていく中で、労働者の「仕事に対するや働きがい」が低いという調査結果に興味を持ち、労働者がどのようにすれば「働きがい」を高めることが出るかについて研究をしました。研究を進めていく中で、仕事に対するやりがい度を示す「ワークエンゲージメント」を高めれば働きがいをより得ることができるのではないかという仮説を立て、研究を進めました。
私達の研究結果として、労働者に対して休暇やリラクゼーションなどの「リカバリー経験」を十分に取得させること、企業はこの経験を十分に取らせるために労働者に寄り添い、協力していくことが必要である、という結論を出しました。
【参加学生の感想】
・この研究テーマに決めて研究をしてみる中で、自分が知らなかった新たな知見や考えを得ることが出来、とても有意義な時間となった。
・自分たちが予想していなかった質問や意見を頂戴することがあり、自分たちとは違う視点からの貴重なご意見を頂く機会となった。
(H.K)