薬物・非行からの再生ー渡邊洋次郎様のご講演
「企業と社会」の授業は経営学部の専門科目ですが、経営学部以外の学生も受講できて、200人以上受講している通年科目です。昨年度に続き、今年も、『下手くそやけどなんとか生きてるねん。――薬物・アルコール依存症からのリカバリー』(現代書館)の筆者である渡邊洋次郎様(46歳)のご講演が、7月5日(火曜日1時限)にありました。渡邊様は今年には対談集も出版予定です。
昨年度には初めてご講演頂きましたが、今回は二度目のご講演となりました。
企業経営の理論を作ったソーシャル・ワーカーのM.P.フォレットの統合の哲学も有名であり、人権やinclusionがSDGsの観点からも重視されています。ご講演には人間関係の理解を深める意義もありました。
今回のご講演では、普通に生まれそだったご家庭だったとはいえ、アルコール依存症だった父親だけではなく、母親との関係でも感情を十分に表現することが出来なかったという観点が紹介されました。アタッチメント(愛着)の欠乏があったことは最近の自己分析の中から明らかになったようです。
発達障害的な傾向もあった小学校時代、そして自己肯定感がない中で、自傷行為を重ねた中学時代の話もありました。それは友人たちが高校に進学する中で、自分の将来への不安感からだったようです。
必要以上に職場でお酒を飲み始めたのは19-20歳のころでした。 お酒を求めた窃盗で警察に捕まり、アルコール依存症といわれて、警察から精神科を紹介されました。精神病院への入院、逃亡を繰り返す人生だったようです。
30歳から刑務所で暮らしました。雑居房から独房の中に移され、自身を見つめる中で、はじめて自分が依存症であることを客観的に認めることが出来ました。
33歳に刑務所を出てから、現在に至る再生の人生がようやくスタートしました。その中で海外の支援団体とのネットワークも広がりました。ニューヨークで国連を訪問し、ユダヤ人家庭からホロコーストを知り、学ぶことの意義にも視野が広がりました。
学生からの質疑応答にも丁寧に真摯に答えてもらいました。聴講した学生にとっては、他者の貴重な人生から自分の人生を見つめなおす得難いひと時でした。渡邊様、今回も貴重なご講演ありがとうございました。
(M.M.)