「薬物・アルコール依存症からのリカバリー」-渡邊洋次郎さんのご講演
7月7日に『下手くそやけどなんとか生きてるねん。――薬物・アルコール依存症からのリカバリー』(現代書館)の筆者である渡邊洋次郎様に、「企業と社会」の講義にご登壇いただきました。
授業の冒頭では、経営学の人間関係論で有名なフォレット女史(Mary Parker Follet)がソーシャルワーカーであったことが、講師によって紹介され、相互に依存すべき社会の意義が説かれました。
渡邊氏(45歳)は著書の帯でも紹介されているように「精神科病院入退院、48回。刑務所、3年服役。「施設太郎」だった私の、生き直し(リカバリー)の道」を歩まれております。その貴重なご体験を客観的に表現する講演者として、全国の大学で啓蒙活動をされています。
ご講演では、30歳すぎて入所した独房の中で、初めて自らを受け入れて許す体験をしたことが印象的でした。それまでは人間関係に苦しみ、自暴自棄的で、自傷行為も重ねていて、自己承認をできなかった自分でした。しかし内心の中に自己愛を初めて体験したとのことで、そこから再生の道へと人生が初めて回転しだしたのでした。刑務所を出ながら再度お酒を飲んでしまい、自分が依存症であることを初めて自覚出来ました。
今は自分と同じような依存症者の回復支援施設「リカバリーいちご」(大阪)で介護福祉士をもった職員としてご活躍です。さらに自助グループにも週に3度は今でも自主的に参加しています。禁酒して11年以上になりますが、今でも依存症であることには変わりなく、対話の必要性を訴えていました。
学生たちは依存症の怖さを知るだけでなく、渡邊さんがスライドで紹介されたアメリカでの社会的な取り組みにも視野が開かれました。そして人間関係の問題、生きる意味など多くのことを学びました。短いご講演でしたが、魂に突き刺すストーリーに溢れていて、貴重な機会となりました。ご講演まことにありがとうございました。
なお、本学法学部の富樫景子先生もゲストとして参加され、アメリカの司法制度の一側面を解説してもらいました。
(M.M.)