論理的思考とは何か(渡邉雅子 著)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2025.06.01

書名 「論理的思考とは何か」
著者 渡邉 雅子
出版社 岩波書店
出版年 2024年
請求番号 080/15-2036
Kompass書誌情報

皆さんは、「論理的思考」に対し、どのような印象をお持ちでしょうか。論理的思考は唯一・絶対的なものであり、それゆえに自分の考えを明確に・説得的に他者に説明するために必要となる共通基盤である、といった認識を持つ方が多いのではないでしょうか。学生・社会人を問わず、そして必ずしも勉学のシーンに限らず、言葉を使ったコミュニケーションをとる上で、論理的思考がひとつの「絶対的なスキル」であることに疑いを持つ方は、それほど多くはないと推察します。

本書は、こうした見解に対し、次のような問題提起を冒頭で行います。「世界共通で不変のように語られている論理的思考だが、そもそも論理的であるとはどのようなことなのか、論理/非論理の線引きは何によって行われるのか。論理的に思考する方法は本当にひとつなのか(本書「はじめに」より、p.i)。」

筆者は留学中に小論文(エッセイ)を提出する経験を通じて、「論理的思考はひとつではない」との気づきを得、こうした着想をもとに洞察を深めていきます。詳細は本書を読み進めてもらえればと思いますが、本書では、なぜ論理的思考が世界共通で不変的ものと受け止められてきたのかを明らかにする作業にはじまり、学問領域や文化の違いに応じ、いくつかの「思考の型」が規定されていること、それに応じた「論理」が多様に存在することが順に議論されます。

「論理的思考」にいくつかの型がある以上、その一つの型のみをテクニカルに取得すべきスキルと捉えることは、視座を限定的なものとしてしまいかねません。置かれた状況に応じ、「ここではどういう論理的思考の型が採用されている(求められているのか)」という一歩引いた視点で思考できるようになること(「多元的思考」を身につけること)は、変化が激しく、また「異文化」に触れることが日常となった現代社会を生き抜く上で必要不可欠な、本質的な意味での「コミュニケーション能力」の獲得につながるものとなると考えます。

経営学部 准教授 塚原 

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