君たちはどう生きるか(吉野源三郎 著)
Date:2025.04.01
書名 「君たちはどう生きるか」
著者 吉野 源三郎
出版社 岩波書店
出版年 1982年
請求番号 080/6-2875
Kompass書誌情報
本書は1937年に刊行された歴史的名著であり、本書を知っている学生も多いと思います。数年前には漫画化されるなどして、再び注目を集めました。その内容の趣旨は、本書の巻末で著名な政治学者である丸山眞男が回想しているように、人間の生き方を問う人生読本です。同時に、本書で展開される物語を通して、社会科学に接近する高度な問題提起もされています。とはいえ、本書は次の時代を担う若者たちに向けられたものでもあり、文章は難解ではありません。
本書では、主人公である中学生のコペル君の日常(様々な出来事)が細やかに描写され、コペル君の苦悩や葛藤に対する叔父さんの助言が描出されています。普段、何気なく過ごす日々の営みや暮らしには、人間として成長すべき機会が沢山あることを気づかせてくれる話です。読んでみると、いわば当たり前のことが書かれているかも知れませんが、人間としての基本に立ち戻る必要性と重要性を叔父さんの温かい言葉で教えてくれます。そこには、いつの時代になっても、どんな年齢になっても、大切な道筋が示されていると思います。前出の丸山眞男は、研究者としての一歩を踏み出したころ、本書にふれて、一端のオトナになったつもりでいた私の魂をゆるがしたと書き記しています。
私が専門領域とする経済学も社会科学の一分野ですが、経済の結びつきは人間の結びつきに帰着するものであり、経済は人間の研究に資するものでなければならないといったことが言われます。まさに、本書で示されているような問題意識に貫かれていなくてはいけないと考えさせられます。
オトナになって、いつの間にか凝り固まって縛られていた自身の考えが解れていくかも知れません。その手掛かりを本書から得てみませんか?
経済学部 教授 大津 健登