測りすぎ:なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?(ジェリー・Z・ミュラー著)
眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2023.06.01
Date:2023.06.01
書名 「測りすぎ:なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?」
著者 ジェリー・Z・ミュラー
訳者 松本裕
出版社 東京 : みすず書房
出版年 2019年4月
請求番号 361.9/243
Kompass書誌情報
データ分析が隆盛を極めている。
データはそれ自体なんとなく客観的に見えるし、それらしい手法や分析結果が一緒なら、科学っぽさは一層高まる。
だが社会科学の場合、そもそも数値化が困難なものは多い。政策の効果、業績評価、幸福度、などなど。代理変数とやらを使って強引に分析を推し進めても、どれだけ真実にたどり着けたかは心もとない。さらに社会科学が対象とするテーマはしばしば因果関係が複雑に絡み合っているから、データの分析結果が持つ意味を解釈することも難しい。
紹介した本は、昨今の計測しすぎる傾向の弊害を説いた本である。学校、医療、軍、警察、ビジネスにおける具体的な(失敗)例が紹介されており、タイトル含めて共感するところは多い。
ただ個人的には、重要なのはバランスだと思う。データにことさら固執し、それ以外のアプローチを軽視する態度は間違っていると思うが、逆にデータをまったく使わずレトリックのみで自説の正しさを主張する態度にも無理があると思う。
誰もがデータを扱える時代になった。謙虚に楽しく学びつつ、それを適切に利用できる知識と知恵を身に着けたい。
経営学部 教授 齋藤 都美