国家はなぜ衰退するのか : 権力・繁栄・貧困の起源(ダロン・アセモグル, ジェイムズ・A・ロビンソン著 ; 鬼澤忍訳)

眼横鼻直(教員おすすめ図書)
Date:2022.03.01

書名 「国家はなぜ衰退するのか : 権力・繁栄・貧困の起源」
著者 ダロン・アセモグル, ジェイムズ・A・ロビンソン
訳者 鬼澤 忍
出版者 早川書房
出版年 2013年6月
請求番号  332/305-1、 332/305-2
Kompass書誌情報

裕福な国もあれば、貧しい国もあるのはなぜか?著者らは一国の経済発展の度合いは、人種でも、歴史でも、文化でもなく、政治と経済を規定する「制度」によって決まると主張する。包括的な制度を持つ国はますます豊かになり、収奪的な制度を持つ国は貧しいままであるということだ。包括的な経済制度の下では、私有財産制の保障が確固たるものであり、法の適用が誰にとっても公正であるだけでなく、競争には誰もが自由に参入できるため、必然的に経済が発展する。経済発展は技術革新を伴うが、技術革新は誰が勝者で誰が敗者なのかといった既存の社会構造を揺るがしかねないため、特権を享受している集団には歓迎されないことがある。ヨーロッパで広大な土地を所有していた貴族たちにとって産業革命は、農業の衰退とともに経済的特権を一部取り上げただけでなく、新たに富を蓄積した集団に政治的特権を侵食されるようにするものであった。貴族たちが産業革命に激しく反発した理由がわかるだろう。だからこそ、国家が経済成長を阻害したり、足を引っ張るような経済制度を採用できないように、公正な競争を通じて有権者に選ばれた政治家が、有権者に満遍なく利益が及ぶような政策決定を行う政治制度も重要なのだ。本書では、全く同じ民族と歴史、文化を共有しているが、経済発展の度合いは克明に分かれる隣国・韓国と北朝鮮の事例から我々が薄々気づいていることを、マヤ族の都市国家からローマ帝国、革命期のイギリスとフランス、旧ソ連、中国、南米とアフリカの独裁国家を行き来しながら実証して見せる。より豊かになるために我々は何をすべきだろうか?本書を読みながら一度考えてみてほしい。

法学部 講師 崔 佳榮

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