DATE:2017.01.24仏教行事のおはなし
高祖降誕会
仏教学部 池上 光洋 准教授
「高祖」は仏教各宗の開祖のこと。曹洞宗(そうとうしゅう)では道元禅師(どうげんぜんじ)(1200~1253)の尊称の1つとして用いている。「降誕(ごうたん)」は仏祖がこの世に生まれること。通説によれば、道元禅師は正治(しょうじ)2年正月2日(西暦1200年1月26日)、父・久我通具(こがみちとも)(1171~1227)と母・未詳の子として生を受けた(※1)。禅師のご生誕を祝って誕生日に行われる法要が「高祖降誕会」である。
道元禅師は仮名『正法眼蔵(しょうぼうげんぞう)』「見仏」の巻(けんぶつのまき)で、「願生此娑婆国土(がんしょうししゃばこくど)しきたれり(願ってこの世に生まれてきたのだ)」と示されている。禅師は一体何を願ってこの世に生まれてきたのだろうか。その答えは「見仏」巻を見れば明らかであるが、より重要なことは我々が何を念(おも)ってこの世に生まれ、また生きているのか、ということであろう。
名聞利養(みょうもんりよう)に明け暮れ、三毒(※2)に翻弄されて生きるのが凡夫の悲しい性であるが、はたしてそれだけでよいのであろうか。高祖降誕会に因んで、改めて自らの足元を見つめ直したい。
※1 旧説では父・久我通親(みちちか)(1147~1202/通具の父親)、母・藤原基房(もとふさ)(1145~1230)の娘。
※2 貪(とん/貪り)、瞋(じん/怒り)、痴(ち/根源的愚かさ)。
※ 本コラムは『学園通信325号』(2017年1月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。