DATE:2022.10.25仏教行事のおはなし
成道会
総合教育研究部 准教授 別所 裕介
およそ2500 年前、インドのガンジス河中流域で活動した釈尊は、今日ブッダガヤと呼ばれる場所に聳(そび)える菩提樹の下で八日間の瞑想に入り、12月8日に悟りに達したとされる。
日本では、仏道が大成されたこの日を「成道会(じょうどうえ)」と呼び、「降誕会(ごうたんえ)」(4月8日)、「涅槃会(ねはんえ)」(2月15日)と合わせ、仏道精進の重要な機会としている。他方、同じ大乗仏教圏に属していても、インドから直接仏教を受容したチベットでは、釈尊の生誕・成道・入滅はすべて4月の満月の日(15日)に起こったとされている。
このため、チベット暦4月に現地を訪れると、僧侶のみならず、一般信徒もまた「八斎戒(はっさいかい)」と呼ばれる期間限定の戒律を熱心に守り、精進潔斎に励む姿を見ることができる。地域によって伝承や暦に多少の差はあれど、仏教の始原に思いを馳せ、釈尊にあやかって一時的にでも禁欲生活を送ろうとする人々の心性は広く仏教圏に共通している。
※ 本コラムは『学園通信349号』(2021年10月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。