DATE:2016.11.29仏教行事のおはなし
成道会
仏教学部 講師 徳野 崇行
日本において、12月8日は釈尊がお悟りを開いた特別な日として宗派を問わず成道会(じょうどうえ)という法会を営む期日になっている。12月1日から8日にかけて禅宗の修行道場では、「臘八接心」(ろうはちせっしん)という坐禅に専念する日々を過ごし、これを締め括る儀礼として成道会が営まれる。
大本山永平寺では、僧堂での坐禅を終えた後、釈迦牟尼仏をお祀りした仏殿で「臘八小参」(ろうはちしょうさん)という儀礼を営む。小参師をつとめる老師からの垂語(すいご)を受けて、雲水は臘八接心を通して感じた自身の問いを大衆の前で発し、老師より教えを受ける。この問答の後、僧衆は釈尊の祀られた北面に向かって長跪(ちょうき)し、「南無本師釈迦牟尼仏」という「聖号」(しょうごう)を唱和する。そして殿行と呼ばれる法要係から給仕されたお粥を喫し、仏殿を出る。
つまり、この「臘八小参」という儀礼は、釈尊が苦行で疲弊した身心をスジャータの献粥(けんしゅく)によって回復したこと、そして菩提樹下での坐禅に入り、明けの明星にお悟りを開いたという故事に由来するものである。二千年以上も昔にあった釈尊の体験は、時代を超えて語り継がれ、現代においても雲水たちが儀礼的に再現することで追体験するものとなっているのである。
※ 本コラムは『学園通信319号』(2015年10月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。