DATE:2022.07.18仏教行事のおはなし
盂蘭盆会
総合教育研究部 教授 小川 順敬
仏教の盆行事の典拠となるのは「仏説盂蘭盆経(うらぼんきょう)」という経典です。この経典には、釈迦の弟子である目連が餓鬼道に堕ちた母を救うという物語があります。
この経典はインド由来の経典ではなく中国で成立した経典です。世俗の価値を否定し出家することは、両親とのつながりを断つ事にもなります。しかし「仏説盂蘭盆経」は親孝行を説いています。
中国には「孝経(こうきょう)」の伝統から孝行が教えの徳目です。親を敬い、親の心を安んじることが重要です。祖先崇拝の原理はこの延長にあります。出家することと親を敬うこと、この相反する原理を統一的にまとめ上げ、仏教に新しい価値を付け加えたのがこの経典です。
盂蘭盆会は、日本の夏の先祖祭と習合して日本の伝統行事となりましたが、先祖を崇めるだけではなく、夏の帰省で久しぶりに両親に顔をみせる親孝行のときでもある事も忘れてはならないでしょう。
※ 本コラムは『学園通信353号』(2022年7月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。