2023年度経済学部奨学論文・入賞者の研究報告です
2023年度の経済学部奨励論文において、私たち長山ゼミ3年の論文が入選しました。1年間の集大成となったこの論文が認めてもらえたこと、とても嬉しいです。
私たち長山ゼミは、長山宗広教授のもとで地域経済学とアントレプレナーシップについて研究するゼミナールです。
今回は、2021 年から東京都世田谷区が行なっている地域連携型ハンズオン支援事業「SETA COLOR」について研究し、その中で自分たちが構築した小規模事業者支援モデルについて論文にしました。
【研究概要】
論文テーマ:小規模企業における事業再構築の支援 −世田谷区における地域ぐるみの伴走支援とウェルビーイング−(行田優羽、東海圭起、山片悠大)
本稿では、中小企業の中でも小規模事業者への事業再構築支援に着目し、東京都世田谷区の事例をもとに新たな事業再構築支援モデルの調査を行いました。中小企業憲章にもあるように、小規模事業者は地域社会の主役です。それにもかかわらず、昨今の中小企業政策においては中規模企業に重点が置かれており、軽視されているという現状にあります。そんな中、コロナ禍を契機とした小規模事業者の経営悪化により、事業再構築の必要性が高まりました。しかし、国が進める事業再構築支援の限界があるため、基礎自治体(市区町村)単位による小規模事業者への事業再構築支援モデルの構築を試みました。
自治体が実施する中小企業政策の中でも、東京都世田谷区の地域連携型ハンズオン支援事業が革新的であったため、これに対する有効性について、オンラインと対面にて、自治体や主催者の支援サイドと、小規模事業者サイドへ、ヒアリング調査を実施しました。調査の結果、主催者である⺠間企業が重要な役割を果たしていることや、伴走支援が充実していること、事業再構築支援を受けた事業者同士でのネットワークが形成されたことが明らかになりました。さらに、ウェルビーイングの連鎖を検証するため、SETA COLORに参画した事業者と、世田谷区の関係人口にアンケートを行いました。これらをもとに、小規模事業者事業再構築支援のモデル(世田谷モデル)を構築しました。
地域連携型事業再構築支援によって地域コミュニティが形成され、ウェルビーイングの状態にある小規模事業者から地域への波及効果が見られました。その結果、自治体と⺠間企業による官⺠連携の地域連携型事業再構築支援が秘める可能性を見出すことができました。本稿では、小規模事業者の事業再構築において、地域連携型支援が経済的・非経済的価値の両面に与える有効性を示唆した内容となっています。
最後になりましたが、1年間ご指導いただきました長山宗広教授、ヒアリング調査やオンライン取材にご協力いただいた関係者の皆様に、感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。
以上を長山ゼミの研究報告とさせて頂きます。
行田優羽