2022年度経済学部学生奨学論文 入賞の蕪木 沙耶さんによる研究報告です

2022年度経済学部学生奨学論文 入賞の蕪木 沙耶さんによる研究報告です。

論文タイトル:「 農 」と共生する都市-戦後の横浜・川崎を事例として-

蕪木沙耶

【テーマ選定理由】
 私は、幼い頃からまちなかにある農地の風景を感じながら過ごしてきましたが、まちの再開発とともに、都市農地が年々次々と減少していることを痛感してきました。
 また最近では「生産緑地の 2022 年問題」という言葉を耳にし、問題意識を感じてきました。2022年問題とは、1991年に生産緑地法が改正された際に指定を受けた生産緑地が、30年を経過する 2022 年に一斉に解除されることにより、農地の宅地化などが進むおそれがあることです。これにより、農地の減少がさらに進み、都市農地はなくなってしまうのではないかという危機感を強く抱きました。
 都市農業は、都市のなかにおいて農作物の生産の場としてだけでなく、これからの持続可能な都市づくりや生活環境の保全、防災機能、子どもの食育など多面的な機能が期待できると感じます。都市に存在する身近な農地であるからこそ、地域において果たす役割は大きいだろうと考え、都市農地の重要性を再認識する必要があると考えました。しかし、都市農業を取り巻く制度や法律が農家を苦しめる障壁となっており、都市農地の減少を加速させている実態があることを知りました。 
 このような経緯から、都市農業を取り巻く制度や法律の歴史的な変遷の研究を通し、これからの都市農地の保全と都市農業のあり方について検討したいと考えました。

【研究結果】
 実際に農家に聞き取り調査を行なった結果、戦後の急激な都市化の時代から、都市農業を取り巻く制度は農家にとって厳しい現状はあまり変わっていないものの、こうしたなかで生き残り発展し続けてきた農家は、それぞれの農家の個性やこだわりを持ち、工夫した農業経営を行なってきたことがわかりました。
 いくつかの農家を伺ったなかで、どこの農家も自らの強みとしている農作物や農法にこだわりを持っており、それを強みに売り出すことで付加価値を高めていることがわかりました。
 しかし、未だ農家を取り巻く制度は非常に厳しく、過大な相続税や固定資産税等の負担、機能していない都市農業に関する制度など課題は多く残っていることが現状です。
 こうした都市農業の課題を解決していくには、抜本的な税制の見直しが求められますが、まず取り組むべきこととしては、自治体等が中心となって都市農業の課題を多くの地域住民が認識し、都市農業を地域全体で保全していく仕組みを作り上げていく必要があると考えます。私は、都市農業の多面的な機能を広く知ってもらうことで、地域住民と共に支え合い、地域の課題・農家の課題をお互いに共有し合いながら一緒に解決していける「地域共存型都市農業」を築いていくべきであると考えました。

市街化区域内の生産緑地地区(筆者撮影(2022 年 9 月 6 日))
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地域の方々が集まり交流しながら耕している農地の事例(筆者撮影(2022 年 12 月 10 日))
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