DATE:2019.07.26研究レポート
研究こぼれ話『文学に描かれた動物』
文学部 大渕 利春 講師
- 文学部 大渕 利春 講師
イギリスの小説を研究している中、文学に描かれた動物に関心をもつようになりました。イギリスでは19世紀からペットを飼うことがブームになりましたが、その反面、動物の虐待も目立つようになります。犬を例にとってみれば、愛玩動物として飼育される犬の数が増える一方、捨て犬も増え、ロンドンの町中には迷い犬があふれ、彼らに対する蛮行が町のあちこちで見られるような状態でした。
ペットの飼育数の増加に伴い、文学の中に動物が描かれることも増えます。作家たちは作品の中に動物たちがおかれた苛酷な環境を描きこみ、問題提起したのです。その中には、動物の待遇改善という成果に結びついた作品もあり、次第にイギリス社会に少なからぬ影響を及ぼすようになります。
例えば、日本でもアニメで有名な『フランダースの犬』の作者・ウィーダは作品内で繰り返し動物の待遇改善を訴えました。彼女はたいへんな愛犬家で、犬が中心的役割を果たす作品をたくさん書いています。『フランダースの犬』のパトラッシュがそうであるように、ウィーダの作品に登場する犬はしばしば人間に虐げられますが、ウィーダは人間と動物は同等の存在であると主張しています。
19世紀には動物虐待が横行したイギリスも、現在では動物愛護の先進国と言われています。一方、動物との付き合い方において日本人は多くの問題を抱えているように思われます。ウィーダらイギリスの作家の作品を読むことで、現在の日本が抱える問題を解決するヒントが得られるかもしれません。
※ 本コラムは『学園通信338号』(2019年7月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。