DATE:2019.01.25研究レポート
研究こぼれ話『基礎研究から臨床へ、臨床から研究へのループ』
医療健康科学部 藤田 幸男 講師
- 医療健康科学部 藤田 幸男 講師
私は物理工学の知識と成果を医学に応用・活用する学術分野である医学物理学を専門として、特にがん治療の1つである放射線治療に関する研究を行っています。この学問の魅力は、研究室で行われる基礎研究を臨床に還元し、がん治療の発展に貢献できる点だと思います。さらに研究室で学術研究を行うだけでなく、医療現場では専門人材として医学物理士が活躍しています。この職種は、研究開発された最新の技術を安全に臨床へ導入することや放射線治療の品質保証等を仕事としています。私も博士号を取得後に大学病院に勤務し、医学物理士として放射線治療に長年携わってきました。この経験の中で、研究に臨床の経験が活きるのはもちろんですが、研究を経ることで臨床に対する見方も大きく変わることを学びました。この経験から、研究から臨床、臨床から研究というループを作り出すのも医学物理士の重要な役割だと考えています。このループにより臨床に必要な研究が強力に推進される力になります。
最新の統計データでは、日本人の2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで亡くなると報告されており、その中で放射線治療のニーズも高まっています。しかし、専門人材不足による放射線治療の質のバラツキが大きな問題となっています。本学に設立された「駒澤大学-VARIAN 放射線治療人材教育センター」はこのニーズを満たすために重要なプロジェクトであるといえます。放射線治療水準の均てん化のために、専門人材の臨床への還元を次の新たなループを作る役割として携わっていきたいと考えています。
※ 本コラムは『学園通信335号』(2019年1月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。