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DATE:2017.10.21研究レポート
在外研究コラム『学問と観光とワインの町』
経済学部 石川 祐二 教授
ドイツ南部のバイエルン州にあるヴュルツブルクは、古い歴史を持つ小さな町で、ロマンティック街道の北側の出発点に当たる。私は、その町にあるユリウス・マクシミリアン大学で、1年間を過ごした。第1回のノーベル賞受賞者であるレントゲンが在籍していたことで知られ、その後も多くのノーベル賞受賞者を輩出している大学だ。研究に打ち込むにはもってこいの、静かで落ち着いた町なのだ。学問の町である一方、ヴュルツブルクは観光の町でもある。
見所の1つは、世界遺産に認定されたレジデンツ(大司教館)だ。1700年代の前半に建築された、ヨーロッパでも屈指の宮殿として知られる。ただし、現在のレジデンツの大部分は、第二次世界大戦後に建て直されたものだ。町全体が戦火に焼かれ、瓦礫と化した。しかし、レジデンツの階段の間と呼ばれる部分は、極めて頑丈に建てられており、そのままの形で残った。そこには、天井にまで描かれた美しいフレスコ画が当時の姿のまま広がっている。
もう1つの見所のマリエンベルク要塞は、レジデンツ建設以前に使われていた司教館だ。聖人たちの像が並ぶアルテマイン橋から、小高い丘の上に建つ様子が見える。その要塞の下の斜面にはブドウ畑がある。ブドウ畑はその他にも、盆地の町をぐるりと囲むように広がっている。ヴュルツブルクは、フランケン・ワインの名産地でもある。白ワインが美味しい。辛口で、ヴゥルスト(ソーセージ)にもよく合う。ヴュルツブルクは美味しい町でもある。夏に橋の上で冷えたワインを飲みつつ考え事をしたのは、楽しい経験であった。
※ 本コラムは『学園通信329号』(2017年10月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。
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