DATE:2017.01.17研究レポート
研究こぼれ話『ユニコーンが現れた!』
経営学部 小野瀬 拡 教授
- 経営学部 小野瀬 拡 教授
- 研究テーマは、ベンチャー企業経営/ベンチャー企業の存立に関する経営学的研究/創業支援の見える化/エンジェル税制活用の促進/地域におけるインキュベーション/長寿企業・事業承継に関する研究。
ベンチャー企業の分野では「ユニコーン」が注目されています。ユニコーンとは、株式市場に上場することなく10億ドル以上もの評価額をもった会社のことです。それぐらいの企業なら上場するものでした。だから数年前にはそんな上場しない企業は「存在するかどうかわからない」といわれていました。角の生えたユニコーンも「存在するかどうかわからない」幻の動物です。だからユニコーンと呼ばれたわけです。
最近、世界では評価額500億ドルとなったUberや同じく200億ドルとなったAirBnBなどのユニコーンが現れました。上場が一つのゴールどころか通過点でもなくなったかのようです。ベンチャー企業の地位向上、価値観の多様化、なども関係しているでしょう。
ところで、『日本ベンチャー学会会報』第75号のアレン・マイナー氏へのインタビュー記事には興味深い指摘があります。以下、私なりの乱暴な要約です。かつて企業をめぐる様々な問題がありました。そこで上場の規制を厳しくしたら、企業は上場しなくなりました。一方で投資銀行も、「失敗しそうな小さな会社」から「失敗しそうにない大きな会社」に投資するようになりました。そんな出資を受けるような企業から見れば、面倒な上場をしなくてもお金は入ってくる状態になりました。こうしてユニコーンが現れた、というわけです。
現時点での事実やデータを見るだけではなく、その背景を見てみようとすることで全く違った景色が浮かび上がります。その背景をどこまで分析できるかが、現時点での私の研究課題です。
※ 本コラムは『学園通信325号』(2017年1月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。