在外研究コラム『タイ仏教で癒される』
グローバル・メディア・スタディーズ学部 杉森 建太郎 講師
在外研究先のタイで感銘を受けたのは、人々の仏教に対する信仰と僧侶の生活です。タイ仏教では、男性は一生に一度は出家することがよしとされていて、身近な男性の多くが「私も出家経験者だ」と言うことには驚きました。また、出会ったタイ人の多くが「お寺に行って、祈ってくる」と気軽に言うことにも驚かされました。実際にお寺に行くと、子どもから高齢者までさまざまな年代の参拝者が本堂を出入りしています。彼らは、床に座り目を閉じて手を合わせ、静かに祈りを捧げていきます。タイ仏教徒にとってお寺は神聖な場所であると同時に、身近な場所でもあるようです。
このように信仰に篤いタイ仏教徒は、僧侶に対して敬意をもって接しています。彼らは、バスや電車等に僧侶が乗ってくると席を譲ります。また例え我が子であっても、出家僧に対してその両親は、神聖な存在として手を合わせます。
一方、僧侶の生活は厳しく制限されています。在家信者が守るのは、殺生、盗み、姦淫、嘘、飲酒・喫煙・薬物を避けるという五戒であるのに対し、僧侶は実に227もの戒律を守る必要があります。袈裟を纏って僧房に住み込み、夜明け前に起床して裸足で托鉢に出かけ、正午以降は液体物以外の食物は口にできません。私有物も最低限の日用品に制限され、妻帯どころか女性の体に触れることすら許されません。
私も、タイ仏教徒の信仰やタイ僧侶の生活に接するうちに、次第にタイ僧侶を見ると敬意をもって接するようになりました。また、タイ人のようにお寺の本堂に座って目を閉じていると、心が休まるようにもなっていきました。
駒大生の皆さんも、タイに行く機会があったら、ぜひお寺に立ち寄ってみてください。きっと、癒されますよ。
※ 本コラムは『学園通信319号』(2015年10月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。