達成できるかどうかではなく、目標にどのようにして向かうかが大事
渋谷エクセルホテル東急 客室支配人 松本 薫 さん
- 渋谷エクセルホテル東急 客室支配人
松本 薫 さん - 1964年東京都生まれ。経済学部商学科卒業。大学ではワンダーフォーゲル部に入部。その後、欧州へ長期旅行に行った際に、ホテル業界に興味を持ち、株式会社東急ホテルチェーン(現:東急ホテルズ)入社。ホテルマンとして様々な業務を経験後、現在は、渋谷エクセルホテル東急の客室支配人として、VIP対応や後進の育成にあたる。
2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控え、ますます注目を集めるホテル業界。その第一線で活躍している、渋谷エクセルホテル東急客室支配人の松本薫さんに色々なお話を伺いました。
どのような学生時代でしたか?
中学、高校時代は写真部に所属してフィルム写真を撮っていたので、大学でも最初は写真部に入ろうと思っていました。ただ、モノクロ写真が好きでしたので、カラー写真が主流だった写真部ではなく、山岳写真を撮りたいという想いもあって、ワンダーフォーゲル部に入部しました。部が体育会系でしたので、上下関係やスケジュールも厳しくて、おかげで規則正しい生活ができていたと思います。でも2年生の時、体調を崩して仕方なくワンゲルを退部することになりました。このことは非常に残念でしたし、ポカンと時間も空いてしまって...。
そんな時、友人の紹介で旅行会社のアルバイトを始めたんです。頻繁にアルバイトに入っていたので、カウンターも任されるようになり、旅行の知識も随分詰め込まれました。業務に生かせるということで、安く海外旅行にも行かせてもらえたことは、本当にいい経験になりましたね。
そのまま旅行会社に就職するのではなく、ホテル業界に就職しようと思ったきっかけは何ですか?
最初は、旅行会社も視野に入れていました。当時は旅行業界が一番人気の就職先でしたから。でも、2カ月ほど欧州を旅したことがあって、その時にホテルの方に興味を持つようになったんです。古いものこそ価値が高いと考える欧州の文化に触れて、歴史を感じるホテルを見てまわるのが面白くなりました。旅行業界はバイト経験で少しだけ見知っていましたので、今度は、優雅な雰囲気のホテルで仕事をしたいと思うようになり、そこからはホテル業界一本に。
ところが、実際に就職してみると、当時はバブル絶頂期ということもあって、ものすごく忙しくて、抱いていた優雅な欧州のホテルのイメージとは全く違いましたね。理想と現実のギャップを痛感しました(笑)。
現在は、客室支配人として、どんなお仕事をされているのでしょうか?
今は役職上、基本的な実務は少ないですね。ルーティンが上手く動いているか等をチェックする管理業務や、VIPの受入&対応が中心です。それまでは、ホテル内のレストランやフロント、予約、客室、営業など、様々な店舗で一通りの業務を経験しました。
ホテル業界で働く上で必要なことや、今まで苦労された点、やりがいなどを教えてください。
ホテル勤務というとずっと館内にいるイメージがあるかもしれませんが、海外出張なども当然あります。フロント係でも海外研修はありますし、自分が羽田のホテルで勤務していた頃は、新航路が就航する度にその国に行って営業もしていました。語学力はもちろんのこと、常に新しいグローバルな視点を持つことも必要になります。
それに、その日どれだけ体調や気分が悪かろうとお客様の前に立ったら関係ありません。一歩でも表に出たら、自分を騙してでもサービスのプロに徹して演じきらないといけない。また、国内外から様々なお客様がいらっしゃいますので、トラブル対応も多いです。ただ、このように、我々が仕事として当たり前にしてきたことがお客様にとっては特別で、感謝されたり、時には手紙をくださったりするお客様もいます。そういう「良かった」というお声をいただけることが、サービス業に携わる者として一番嬉しいことですし、やりがいを感じるところですね。
海外からのお客様にとっては、宿泊したホテルが日本の第一印象になります。来年のオリンピックを控えて、少しでも日本が良い国だと思ってもらえればいいなと思っています。
現役学生に向けてメッセージを。
今、就職を考えている学生に対して私が伝えられる言葉があるとしたら、大まかでもよいので、人生の設計図を持って社会人になった方が良いということです。圧倒的な実力や才能がある人は別ですが、自分のような普通の人間は、例えば「25歳で結婚して、30歳で家を建てる」といったことでもいいので、ある程度のスケジュールを決めておいた方がいい。これは自分自身への反省でもありますね(笑)。目的意識がないと張りがないですし、何かを意識しながら目標を持って行動をすれば、「どうすれば良いか」を常に考えるようになる。目標を達成できるか否かが重要なのではなく、その目標に対して「どのようにして向かうか」が大事だと思います。
※ 本インタビューは『学園通信338号』(2019年7月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。