活躍する卒業生

DATE:2017.03.06活躍する卒業生

感謝の心をもって、美味しいお菓子を作り続けたい

「パティスリー ヤマムロ」オーナーシェフ 山室 正範 さん

株式会社ハッピーアロー代表 森 順子 さん
「パティスリー ヤマムロ」オーナーシェフ 山室 正範 さん
1978年神奈川県生まれ。2001年仏教学部仏教学科卒業。横浜のフレンチレストランでパティシエを務めた後「ル パティシエ タカギ」(世田谷区深沢)に8年勤務し、スーシェフ(副料理長)として活躍。2012 年3月15日に自身がオーナーの店をオープン。新鮮な材料と味にこだわるお菓子づくりで人気店となる。

若きオーナーシェフとして活躍中の山室さんに、パティシエを目指した経緯や信念を伺いました。

仏教学部ご出身なんですね。

私はお寺の三男坊で附属高校から駒大に進学したのですが、別の道への興味もありました。3年生になり周囲が将来を考え始める中、自分にはやりたいことも目標もなく、かといって企業で働く姿もまったく想像できなくて。そんなときテレビでパティシエを見たのがきっかけです。当初は軽い気持ちでしたが、専門学校で学ぶと決めてからは覚悟が固まりました。4年生からは昼は大学、夜は製菓専門学校で学びました。

周囲からは驚かれましたよ。でも私は、一度決めたら勢いでつき進んでしまうんです。なぜこの道を選んだのか長いこと自分でも謎だったのですが、私の結婚式の日に、叔母が「実はあなたの曽祖父は和菓子職人だった」と明かしてくれたんです。なるべくしてなったのだと、すっきりしました。

修業時代に得たことは何ですか?

専門学校卒業後は横浜のレストランで2年働き、その後「ル パティシエ タカギ」に移りました。採用条件は職場から近い場所に住むこと。それだけ仕事が厳しいわけですが、この業界では「若いうちは有名店より忙しい店に行け」とよく言われます。今思うと、考えたり悩んだりする余裕もなく同じ作業をくり返し、手や身体にたたきこむ環境がよかったですね。実際、指導の厳しさより、仕事量がすさまじいんです。100個単位で作りますし、ピーク時は2時間睡眠が続きます。でもそれが普通だと思っていましたし、レベルの高い先輩方に囲まれ、良い刺激を貰うことができました。

修業時代に学んだのは、技術より精神面が大切だということ。お菓子は材料の配合がグラム単位で決まっているので、誰でもある程度の技術が身につきます。ですが、同じ配合で同じ形のマドレーヌができても、作る人によって味がまったく違う。いい加減に作る と、味にも表れるんです。

独立した経緯を聞かせてください。

パティシエは長時間で重労働、しかも若いうちは驚くほど給料が低いから離職率が高い。また、オーナーや大手のシェフを目指す人は約4年のサイクルで店を渡り歩くので、入れ替わりが激しい職場です。私の場合、人や環境に恵まれたこともあり、タカギで8年お世話になりました。

最後の3年はスーシェフを任されましたが、30歳で結婚したのを機に将来について考えました。そこで高木シェフに「店をもってはどうか」と勧められたのが大きいですね。オーナーとなるとケーキのアイデア出しも自力だし、経営や資金繰りのプレッシャーも背負います。でもそのときも決断した後は勢いで動きましたね。腕は認められていたので自信はありました。幸い、物件探しなどで多くの人が協力してくれて。特に家族、妻の協力があってこそですね。

私が目指すのは、老若男女みんなに親しまれ、喜んでもらえるお店です。個人店では難しい卵抜きのケーキを開発したのもその一つです。子どもにとって誕生日は特別な日だから、アレルギーのある子にも喜んでほしくて。ケーキにチョコペンでイラストを描いたりもしますが、代金はいただいていません。お客さまへの感謝のつもりです。

学生にメッセージをお願いします。

店を構え、お菓子を提供し、多くの人に喜んでいただく。かつては想像もつかなかったことです。学生時代は気づかなかったけれど、仏教的に言えば、自分は本当に多くの人に「生かされている」と、社会に出て初めて実感できました。

常に感謝の心をもてば、おのずと謙虚になれます。謙虚に人の声に耳を傾けると多くを吸収できるようになり、技術だけでなく精神も成長できます さらに、吸収力は自分で考える思考力となり、高い目的意識が生まれます。目的から情熱が生まれ、良い縁を引き寄せ、行動力へとつながっていくのです。これはパティシエに限らず、どの仕事も同じかもしれませんね。

パティスリー ヤマムロ

アクセス : 東京都 新宿区信濃町10 宮下ビル1F
      JR総武線「信濃町駅」より徒歩4分
営業時間 : 10:00 ~ 19:00(水曜定休)
公式ホームページ : http://r.goope.jp/yamamuro

※ 本インタビューは『学園通信313号』(2014年7月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。

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