名誉教授に聞く

DATE:2021.01.19名誉教授に聞く

メディアリテラシーや移民研究の知見を「ベターライフ」、将来に希望を持てる社会実現のために活かす。

白水 繁彦 名誉教授

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目に映り、聞こえてくるものには"作者の意図"がある」。メディアリテラシーを高め、情報に操作されない人になろう。

移民研究の第一人者である白水名誉教授は移民のメディア文化論などにも知の領域を拡げ、さらにメディアリテラシーの重要性を説き民主主義社会を機能させるための提言を続ける。

自由に発言できる場から生まれる〝発見〞を重視する「社会人ゼミ」

白水名誉教授は現在、駒澤大学で「社会人ゼミ」と呼ばれる「グローバル・メディア・スタディーズ・ラボラトリ『社会とメディア』プロジェクト公開研究会」で講師を担っている。「これは私の理想のゼミ」と言う。なぜなら、参加者は年齢や学歴、職業など一切不問で「勉強したい人が勉強する場」だからだ。

ゼミの大テーマは「映像で学ぶ、映像を学ぶ」。白水名誉教授はテーマに即した映像作品を選択・提供し、必要であればゲスト講師を招き、映像鑑賞後に行われるディスカッションの舵取りをしている。学期毎のテーマは「日系移民の体験から民族・文化を考える」、「ドキュメンタリーの作られかた」、「戦争とプロパガンダ」などで、かなり踏み込んだ映像と課題を参加者に投げかける。しかし、ディスカッションは敷居が高いものではない。「参加者は自由に自分の意見を言い、質問します。こういう場はありそうだけど、なかなか見つからない。だからこのゼミを作りたかったわけです」。

メディアリテラシーをすべての人に切実に願い、社会人ゼミで養う

もう一つ、ゼミで磨きたいと思っているのが〝メディアリテラシー〞である。「以前から、日本ではメディアリテラシーの教育が足りないと感じていました」。メディアリテラシーとは、メディアからの情報を批判的な思考も持って読み解くことができる力、そして的確に発信する力で、民主主義社会をより良く機能させるために必須の能力だ。「例えば、テレビで放映されるドキュメンタリーを鵜呑みにする人が多い。しかし、その映像作家が『なぜ、このシーンにこのアイテムをわざわざ写し込んでいるのか』を考える必要があります。なぜなら作家はそこに〝意図〞を持たせているから」と言い、「実は、私たちの目に映り、聞こえてくるものはすべて〝作者が作っている〞。作者が一流であればあるほど〝自然に〞仕込んできます」と続けた。「参加者がメディアや為政者に操作されることなく、自分で考えて行動、発言する民主主義の確かな担い手になる必要があると強く思います」。

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「ゼミを通して目指すのは〝ベターライフ〞。世の誰しもが将来に希望を持てる社会を作るにはどうすればいいのか、思考のきっかけを提供したいと考えています」。そして、ゼミは毎回、「ここで話し合った知見を、制度や教育をより良く変えるために、どう活用できるか考えてみましょう」という、白水名誉教授のメッセージで締めくくられる。

移民研究の知見は、日本で暮らす外国人問題に応用が可能である

白水名誉教授の専門はメディア社会学、エスニック文化論など多彩だ。最初はマスコミュニケーションの研究をしながらアメリカでフィールドワークを行い、「小規模な地域メディア」に関心を持ち、ローカルメディアの研究を始めた。その後、移民の生活基盤である「エスニックコミュニティ」が存在することに気づき、エスニックメディアの研究へと広がる。特にハワイの日系人メディアや文化史については多数の著書があり、さらにハワイに暮らす沖縄系社会の研究から、海外沖縄系の文化についても多数の講演を行っている。

「私は海外で〝移民〞について、多角的に研究をしてきました。その知見を今、日本で暮らす外国人に対する法整備や教育問題の解決に活かせると考えています」と、提言を続けたいという思いも語ってくれた。

白水 繁彦 名誉教授
1948年 佐賀県生まれ。成城大学文芸学部卒業。成城大学大学院日本常民文化専攻修士課程修了。社会学博士(立教大学)。高千穂商科大学教授、武蔵大学社会学部教授・社会学部長を経て、2008年 駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授。2015~2017年 駒澤大学大学院グローバル・メディア研究科委員長。「CNNデイブレイク」キャスターとしても活躍。神奈川県広報ビデオ審査委員、放送番組国際交流センター委員等を務める。著書は『海外ウチナーンチュ活動家の誕生:民族文化主義の実践』(御茶の水書房)、『日本人と海外移住』〈共著〉(明石書店)など多数。

※ 本インタビューは『Link Vol.10』(2020年5月発行)に掲載しています。掲載内容は発行当時のものです。

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