第56回 全日本大学駅伝 選手・監督インタビュー
第56回全日本大学駅伝対校選手権が11月3日、熱田神宮西門から伊勢神宮内宮宇治橋前までの全8区間、106.8kmで行われた。
駒大は序盤に流れを引き寄せることができず苦戦する場面もあったが、3区では伊藤蒼唯(政3)の8人抜きの快走を見せる。中盤では、三大駅伝初出走となる1、2年生が区間3位から5位の好走でつなぎ、エース区間と呼ばれる7区、8区で連続区間賞を獲得。最後は8区の山川拓馬(営3)が驚異の追い上げで前を走っていた青学大をかわして準優勝を果たした。選手・監督のインタビューは以下の通り。
◆1区:島子公佑(営2)
ーー今日の調子は
「走ってみないと分からなかったので、つけるだけつこうと思っていた」
ーー2回目の駅伝で1区を走ることになったが
「緊張はしたが、出雲を走っていたので少し緊張が和らぎ、良い状態でスタートできた。しかし、ふたを開けてみれば力不足だったので、まだ経験が積めていなかったなと思った」
ーー地元の伊勢路につながる駅伝だったが
「走ったのは三重ではなかったが、全日本を走るのが夢だったので幸せだった」
ーーレースを振り返って
「自分は戦力にはなれなかったので、もう一度リベンジしたいと思っている」
ーー箱根に向けて
「ここから選考されていくと思う。今後ハーフマラソンへの出場を予定しているので、もう一度選考に勝ち、レギュラーを取りたい」
◆2区:桑田駿介(経1)
ーー今日の調子は
「調子は悪くなかったが、走ってみたら思ったように体が動かなかった」
ーー初の伊勢路となったが
「自分としては全然何もできなくて、むしろマイナスになってしまったが、本当にチームメイトに救われた」
ーー今日のレースプランについて
「1区次第だった。7秒差だったので先頭に追いつくことができれば良かったが、少し早い段階でペースを落としてしまったところが自分の判断ミスだと思う」
ーー監督やコーチから試合後に言われたことは
「先輩方が順位を上げてくれたということで『また来年もあるので切り替えて頑張っていくように』ということと『この悔しい思いを次につなげるように』と言われた」
ーー箱根に向けて
「今回のレースは何がダメだったのか自分の中でしっかりと考えて、距離も倍になっていくと思うので、一からまた考えてやっていきたいと思う」
◆3区:伊藤蒼唯(政3)
ーー今日の調子は
「出雲に比べてだいぶ上がってきていたので、わりといい感じで臨めたと思っている」
ーーレースプランは
「今までは前半少し抑えて入っていたが、それを変えて、最初の5キロを突っ込んで入り、粘ることを想定して走った」
ーー後方でタスキを受けることになったが
「いろいろなパターンを想定していたので、あまり動揺はなかった。狙っていたタイムがあったので、そこに向けて自分がどれだけ力を出せるかというところに重きを置いていた。おおむね達成できたのではないかと思う」
ーーレースを振り返って
「早い段階で4、5人抜いて、そこから耐えて1人2人と抜いていく形になった。各地点に目標となる選手がいて、そこを拾って走れたこともあり、想定以上のタイムが出たのではないかと思う」
ーーごぼう抜きとも言える走りだったが
「自分はシード圏内まで順位を押し上げただけで、そこから2位まで持っていってくれたのは後半区間(の選手)。4区以降の選手がいい形でつないでくれた。最後にエース区間の7、8区で篠原(倖太朗、地4)さんと山川(拓馬、営3)が区間賞を連続で取り、2位まで上がった。自分以降の4区から8区の選手に感謝している」
ーー箱根に向けて
「去年出走できなかったので、まずは体調を整えたい。合宿でも継続して練習を積み、本番笑ってゴールができるようにしたいと思う」
◆4区:谷中晴(経1)
ーー今日の調子は
「けがのため、練習が続けられず離脱してしまうことが多かったが、10月の出雲市陸協記録会からはけがをすることなく練習を積めていたので、自信はあった」
ーーもうひとつの出雲駅伝で優勝してからの大会だったと思うが目標は
「同部屋の先輩である山川拓馬(営3)さんが1年次に好走した区間ということもあり、山川さんを見習って区間賞を取り、チームの力になれるようにと思って走った」
ーーレースプランは
「青山学院大や国学院大が競ってくるようであれば、しっかり後ろについて戦いたいと考えていた。また、単独走が速いという自分の持ち味を生かし、最初からハイペースで入って区間賞争いをするプランだった」
ーー今日のレースを振り返って
「結果は区間3位ということで、黒田朝日(青学大)に40秒も離されてしまった。初駅伝ということもあり、色々緊張した面もあったが、山川さんに近いタイムで走れたので成長の第一歩かなと思った」
ーー大学デビュー戦で区間3位だったが
「区間1位が黒田選手で、区間2位が斎藤将也(城西大)選手ということで、1万メートルで27分台のタイムを持つ2人に並べたことはとても自信になった」
ーー箱根に向けて
「箱根は20キロ以上の距離になるので、距離に対して不安があるが、上尾ハーフなどへの出場を予定しているので、もう一度調子を戻して自信をつけ、箱根に向けてチームの力になっていきたい」
◆5区:村上響(地2)
ーー今日の調子は
「調整段階から調子がよく、自信を持ってスタートラインに立てたことは良かったが、調子が良い分、最初速めに入ってしまった。前を追わないといけないこともあり突っ込んだレースをしてしまい、後半は向かい風と暑さもあり苦しくなった。区間順位が5位だったので、悔しい気持ちもあるが、多少粘れたとは思う」
ーー2年生では2人目の駅伝デビューになったが
「自分たちの学年で『駒澤大学を底から突き上げていこう』という話し合いを今季の初めにして、レースに臨んでいる。出雲では島子公佑(営2)ひとりの出走だったが、全日本では2年生が3人走れたことは大きな収穫だと思う。箱根に向けて油断することなくやっていきたい」
ーー三大駅伝初出走だったが、緊張などはしたか
「あまり緊張するタイプではないので、いつも通り準備して走ることができた。箱根に向けて頑張っていきたい」
ーーレースプランは
「ある程度、追う展開だったため、最初からしっかりと飛ばして最後は粘るというレースプランだった。最初に飛ばしすぎてしまい、後半に粘りきれなかった部分がある。次に走るときはもっと長い距離になると思うので、安定して走れるようにしていきたい」
ーー監督やコーチからレース前に言われていたことは
「『状態はいいから自信を持って、誰にでも初めてのことはあるから緊張せず、追う展開にはなるがいつも通りしっかりと行け』と激励をもらった。そのため、しっかりと走ろうと気合いが入った」
ーーレースを振り返って
「最初速く入りすぎてしまい、後半にバテてしまった部分があった。練習の段階ではいい感じにきていたため、この調子を崩すことなくより上げていけるように練習を頑張りたい。試合では、もう少し落ち着いて自分の走りに自信を持って最後までスタミナを保って走れるようにしていきたい。あとは距離走などスタミナ系の練習をしっかりとやっていきたいと思う」
ーー箱根に向けて
「國學院大に二冠を取られたため、残りは箱根しかない。今回、区間5位だったことやチームも2位ということで悔しい思いをした。箱根では区間賞を取れるように準備や練習をしていきたい」
◆6区:安原海晴(商2)
ーー今日の調子は
「調整の段階からかなりよく、いい調子で臨めた」
ーー2年生で3人目の駅伝出走者となったが
「出雲で島子公佑(営2)が出走してくれて『全日本はやってやるぞ』という思いで出雲から全日本の間の練習をしてきた。学年としても少しずつ駅伝に絡み始めることができ、活躍できる機会が増えたことがうれしい」
ーー自身も初の駅伝出走となったが
「初めての駅伝ということで、緊張はあまりなかったが、チームとして背負うものが大きかった。自分の中では楽しんで走ろうという思いがかなり強かった。楽しんで走ることができてよかった」
ーー初の駅伝出走が兄である安原太陽(24卒・現Kao)が昨年まで走っていた区間と同じだったが、何か思うことはあったか
「6区は兄が大学2年生から3年間走ってきた区間で、自分としても6区を走りたいという思いがあった。6区を走ることで、兄の走りを継ぐことができてよかった」
ーー監督やコーチから言われていたことは
「レース前は『序盤は抑えつつ、後半はどんどんペースを上げていくように』という指示があった。レースが始まると、前との差がかなり開いてしまい『最初から突っ込んで、キープして走らないと勝てないから』という指示を受け、序盤から突っ込んで走った」
ーー箱根に向けて
「チームとして『出雲・全日本までの結果は一旦すべてリセットし、ここからもう一度選考をかけ直す』ということを言われている。これからハーフマラソンもあるが、普段の練習から自分の強みをアピールできるようにし、箱根でもチームに貢献できるような走りをしたい」
ーー箱根での希望区間はあるか
「単独走が得意なので、復路を走りたいと思う。10区でゴールテープを切ってみたいという思いもある(笑)」
◆7区:篠原倖太朗(地4)
ーー対外的に駒澤大学が強いということを見せられたことはプラスに感じるか
「『駒澤強いじゃん』というところは見せられたと思うので、及第点」
ーー7、8区が特にすごかったが
「今までも6、7、8区という『駒澤のホットライン』で勝ってきているので、改めて(強さを)証明できたと思う」
ーー桑田駿介(経1)には何と声をかけたか
「自分も出雲の時に外してしまっている上、負担をかけるような区間を走らせてしまい、急な区間変更もあった。『自分の負けを自分で噛み締めて、この試合があって良かったと思えるように次につなげて欲しい』ということを言った」
ーー箱根での戦いも見えてくると思うが
「崩れないということが1番だと思う」
◆8区:山川拓馬(営3)
ーー今日の調子は
「悪くない状態で挑んだ。57分9秒で走ったが、自分が狙っていたのは56分台。狙っていたタイムを切れず、悔しい。チームとしても、2位になったのは悔しい部分がある」
ーーレースプランは
「大八木弘明総監督と藤田敦史監督とも話をして、突っ込んで入り、そのまま一定のペースでいくことが目標だった。そこは守れたが、坂でペースを落としてしまったのでそこがまだまだ課題」
ーー3位でタスキを受けることになったが
「接戦になることは分かっていた。何位でもらうことになってもとりあえず前に行くしかないと思っていたので、そこはあまり気にしていなかった」
ーーレースを振り返って
「一定のペースで突っ込んでいけたことはよかった。総合的に見たら自分(のタイム)が56分台に乗らなかったことと、チームとしても28秒差で2位というところで悔しい気持ちもあるが、しっかりとまとめられたのではないかと思っている」
ーー最後に塩出翔太(青山学院大)を抜かした時、心境の変化はあったか
「(塩出の姿が)見えた時から行こうと思っていた。攻めようと思っていて抜けたのはよかったが、その先に國學院大が見えていたので、抜けなかったことは悔しい」
ーー1位の国学大は抜こうと思っていたか
「走る前に中継所で上原琉翔(国学大)にも『追いつくわ』という話をしていたのに追いつけなかった」
ーー今後の目標は
「昨年は箱根で失敗してしまったので、また箱根でリベンジできるように、ここからもしっかりと練習を積み重ねて行きたい」
ーー今までの箱根では4区、5区を走っているが今年の希望区間は
「5区。チーム状況によって変わると思うが5区を狙っていきたい」
◆藤田敦史監督
ーー大会を振り返って
「出雲に続いて國學院大に負けてしまったので悔しい。出雲、全日本も連覇を目指した中で負けてしまったということは事実なのでそこの悔しさはあるが、出雲、全日本と初めて駅伝を走る選手達がしっかりとまとめる走りをしてくれたので、そこは収穫だった。出雲は篠原倖太朗(地4)で負けて、その悔し涙を見た谷中晴(経1)が好走した。今回は桑田駿介(経1)が苦しい走りになったのを見てそれ以降の選手が頑張ったように、非常に地力はあるチームだと確認できた。あとは箱根でいかに10人そろえることができるか、ミスをしない駅伝ができるか、そこが1番ポイントになるのでそこをしっかり作り込んでいこうと思っている」
ーー谷中、村上響(地2)、安原海晴(商2)の3人が初出走だったが
「今回のポイントは、4区から6区が初出走だったのでその3人がどういう走りをするかによって前半の流れが決まると思っていた。早々のところで桑田が遅れてしまい、流れに乗るどころかビハインドの位置から上げなければいけないという状況だったが、その状況で区間3〜5位でまとめたことは立派だと思う。これは非常に今回の収穫。さらに7区、8区のエース区間も地力の確認ができたので、箱根に向けてすごく好材料がそろったと思う。決して悲観する結果ではないと思うが負けた事実は残るので、その悔しさをチームとして持ってやっていきたい」
ーー昨年度二冠を達成し最後の箱根では負けてしまったが、2つ勝っていくことでのチームの勢いは感じることがあったと思う。その中で国学大が2つ勝って勢いをつけてきたと思うが、三冠を獲りにくると思うか
「もちろん三冠取りに来ると思う。三冠にチャレンジできるというのは国学大だけなので。ただ、やはり箱根になるといろいろなプレッシャーや期間も空くので、一筋縄ではいかないというところはある。あとは山をいかに制するかといった点もある。プレッシャーもあるだろうが是非前田監督には今回私たちが達成することができなかったことを、チャレンジして欲しい。だからといって我々も負けるつもりはないので、挑んでいきたい」
ーー山川がこれだけ平地で走れると箱根の配置はどうなってくるか
「2区で使いたくなってしまう。迷っている」
ーー山川以外に山候補はいるのか
「山川拓馬(営3)クラスとなるといないので、2区と5区のどちらで流れを作るかによる。2区は差がつかないので、2区でしのげる人がいれば、山川が山で勝負ができる。逆に2区に山川を置けば、2区でしっかり流れを作ってということもできる。それはこれからの状況次第。戦える兆しは見えてきた。他大学に与えたインパクトは今回も大きかったと思うので、その点においては非常によかった」
ーー山川と篠原には相当自信があったのでは
「7区8区は絶対にうちが強いというのは自信をもっていたので、そこは『駒澤やっぱりすごいな』と思わせることができたと思う。あとはこれを箱根に生かしていきたい」
ーー3位で終わらず、山川君が最後に取り返したが
「あれはやはり大きかった。しっかりと次にタスキがつながった」
ーー4区、5区、6区が初駅伝だったが、今回1.2年生が半数以上を占めていた。来年以降を見据えても、プラスの材料に思えるが
「今回国学大は、1年生が走っていなかった。駒大はその点においては(1年生の)桑田と谷中がこれで走り、2年生にも経験を積ませられた。これに小山翔也(経2)や小松聖(政2)など、これから伸びていく選手が多いので2年生はこれから面白くなる。だいぶ育成に時間がかかった。ようやく出てきてくれたから、これからが面白い」
ーー来年、佐藤圭汰(経3)をはじめ山川や伊藤などが最上級生になるが
「3年生は間違いないので、来年3年生になる現在の2年生がしっかりできれば面白い。1年生もまだあと2人くらい伸びそうな子がいるので、これからの駒大はかなり楽しみ」
ーーこれから上尾ハーフあたりで選考会をやる予定か
「上尾でもう一度走らせて、どれくらいやれるか見て、合宿で走り込みをする。今回、出雲から全日本までほとんど練習ができなかった。走り込みが足りないので、11月から12月にかけて走り込みをしたい。千葉県の白子はあんまり混んでおらず集中出来るので、11月末から12月の頭くらいまで白子で合宿をする」
ーー出雲の2位と全日本の2位の違いは何か
「出雲は篠原で負けたが、ブレーキはほとんどなかった。今回2区の桑田はブレーキだった。出雲も全日本も、国学大はそういう意味ではしっかりつなげていた。8区間で今回1区間外してしまった。ミスしたら負けるというのを今回すごく感じた。青学大もアンカーで区間2桁になったから、山川に抜かれた。普通に走ってれば塩出翔太(青学大)の力であれば多分抜かれていない。今回の駅伝は、ミスしたところが敗因になってくる。箱根もそうなると思う。ミスしたところが負ける。ミスをしないところが勝つ」
ーー追い上げての2位で箱根に希望が見えるが
「希望は見えたと思うが、箱根になるとまた2人増やさないといけない。あと山がある大変さはあるが、やりがいはある」
ーー佐藤が戻ればプラス材料になるが
「ある意味出雲と全日本を圭汰抜きで行けたというのはいい機会だったと思う。どうしても圭汰頼みになっていた所があったから、流れを作れた。箱根で負けてから他の選手達も圭汰だけに負担をかけるわけにはいかないと思っていた矢先にけがをしてしまった。圭汰がいないなら、いない中で戦えるようにしようという自覚を持てたことが良かった。けがの功名ではないが、圭汰がいなかったことで自覚が芽生えて選手層が厚くなり始めた。それがいい事だと思う」
ーー伊藤蒼唯(政3)山川も出雲に続き一皮剥けたものはあるか
「あとはここから。去年はここから山川などのけが人が出たため気が抜けない」