陸上競技部

DATE:2023.11.07陸上競技部

第55回 全日本大学駅伝 選手・監督インタビュー

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(撮影:大塩希美) 

  第55回全日本大学駅伝対校選手権が11月5日、熱田神宮から伊勢神宮までの全6区間、106.8kmで行われた。
 駒大は全区間首位通過と圧倒的な力で優勝し、2度目の4連覇を達成した。選手・監督のインタビューは以下の通り。

◆1区:赤津勇進(現4)

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(撮影:伊東俊翔)

ーー今日の調子は
「調子はとても良かった」

ーー1区出走はいつ決まったか
「出発する前日に伝えられた」

ーーどういう経緯で伝えられたか
「全体のミーティングの時に『1区は赤津』と言われて、かなりびっくりした」

ーー選ばれた時はどういう気持ちだったか
「自分が選ばれたことに対するうれしさと驚きがあった」

ーーレースプランは
「藤田敦史監督から『着いていくだけでいい。最後上げればいい』と言われていた。最初は緊張していたが、走り出したら緊張は取れた。次が佐藤圭汰、篠原倖太朗だったため、余裕を持って走ることができた」

ーーアップ時に手を振っている姿が見受けられたが、気持ちに余裕はあったか
「走る前は余裕はなかった。緊張していた」

ーー久しぶりの三大駅伝出走となったが
「自分にとっては最初で最後の全日本。その全日本を最高の走りで終えることができたため、とても満足している」

ーー若林宏樹(青学大)が4キロ付近で抜け出したときの心境は
「青学大の選手が前に出たとき、正直このまま離されていいのかと少し悩んだ。隣のバスを追い抜くときに大八木弘明総監督と視線が合って、総監督が行かなくて良いというジェスチャーをしてくれた。自分は、それだったらこのままのペースでラストで抜かしてやろうと思い、余裕ができた」

ーー初の区間賞だが
「本当にうれしい」

ーー優勝して
「自分にとって最初で最後の全日本大学駅伝で、メンバーはみんな自分より速い選手だった。自分が始めの一歩をしくじることがなければ、確実に優勝ができるチームだと思っていた。走る前は『自分がしくじったらどうしよう』と緊張でいっぱいだったが、総監督や監督から『余裕を持ってのびのび走って欲しい』と言われ、その言葉通りに走ることができた。ラストもペースをあげることができ、見事最初で最後の全日本大学駅伝を区間賞で終えることができた。自分にとっては満点の終わり方だったと思っている」

ーー練習をチームに分けて行っていることについて
「ポイント練習はS.A.B.Cチームで分かれて行っており、自分はAチームで練習している。Aチームの練習をしっかりこなさないと、三大駅伝のメンバーには選ばれない。Aチームの中で自分をアピールすることが大事だと思う」

◆2区:佐藤圭汰(経2)

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(撮影:坂元采夏)

ーー去年から2区を任されていたが
「前半の流れを決める大事な区間だと思う。絶対に流れを途切れさせないためにも自分がしっかりトップに立ち、後ろのチームとの差をつけることが自分の役割だと心得ていた。出雲も全日本もそういった役割を果たせてよかった」

ーー前半から攻めていくことについて
「自分は他校を意識せず、区間新記録のみを目標に頑張っていた」

ーー山口智規選手(早大)がついてきたがどう思っていたか
「山口選手のことは気にしていなくて、自分のペースで区間新を狙おうと思っていた。多少競っていたが、中盤あたりから落ちていったのが分かったので、気持ちを持ち直した」

ーー少しの焦りはあったか
「本当に少し。離れるとは思っていた」

ーー自分で振り切れると思っていたか
「狙えたらペースを上げようと思っていた」

ーー去年まで田澤廉選手(23年卒、現トヨタ自動車)が受賞していたMVPを引き継ぐ形になったが
「田澤さんの後を継げたのはうれしい。MVPを取ったことはうれしいが、そこで満足するのでなくここからさらに世界、箱根に出場しようと思っている。それに向けて気持ちを切り替えて準備していきたい」

ーーミーティングで「区間新を出したい」と言ったことについて
「自分は去年、出走した駅伝すべてで区間新を取っている。自分自身に大きな目標を掲げることでモチベーションが上がるので、区間賞でなく区間新を掲げる。これが自分の今までのスタイルなので、区間新を目標にした」

ーー区間新を目標にしたのは前日の夜か
「ずっと言い続けていた」

ーー総監督からも駒大のMVPは佐藤と言われていたが
「出雲ではとても怒られたので、今回少しは認められたのかなと嬉しかった」

ーーどのように怒られたのか
「黒田(朝日、青学大)選手(と区間賞タイになったこと)に対してと『コース取りが悪い』と言われた。コース取りについてはカーブ部分を大回りに回ってしまったこと」

ーー藤田監督からも言われたのか
「藤田監督からも『コース取りが悪いな』と言われた」

ーーそこから意識したことは
「今回のコースはカーブがなかったので、あまり意識することはなかったが、最短を行こうと意識した」

ーー監督・総監督からレース後かけられた言葉
「『良かったな』と言っていただいた。前半で突っ込んでいった分、後半でペースが落ちると予想されたと思うがあまり落ちず『よく粘った』と言われた」

ーー出雲で怒られた後について
「次は絶対に見返してやると思った。落ち込んだ部分もあったが、落ち込んでいる暇もないので全日本に向けて切り替えてやっていった」

ーー怒られることに対して
「いつも沢山怒られるが、監督としてはもっと上のレベルに行って欲しいという想いがあると思う。自分のポリシーとして『現状に満足しない』と決めているし、監督もそれを分かっている」

ーー箱根での希望区間は
「特にないが、2区と5区・6区以外であればうれしい。2区の23kmは自分にとってまだきつい。5区・6区の山登りに関しては駒大には適正選手がいるため任せ、自分はそれ以外の区間を任せて欲しい。できれば往路がいいが、特に何区がいいというのはない」

ーー来年に向けての練習については
「今年は自分の不甲斐ないミスでチームに迷惑をかけたが、来年は走り以外に体調管理の面も準備を怠らないようにする。最後まで何があるかわからないという意識で行きたい」

◆3区:篠原倖太朗(地3)

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(撮影:横田瑞歩)

ーー優勝して
「区間賞を狙っていたが、ヴィクター・キムタイ(城西大)が予想以上に強かった。自分としてはある程度のタイムで走れたかなと思ったが、区間賞を取れなかった以上悔しいレースとなった。後続の日本人選手や、優勝争いをするような駒大の連覇を止める大学を突き放すことができたことは、一つ自分の自信になった。また、改めて考えてレースをすることの大切さが身についたと思う。箱根では区間賞を取る」

ーー練習をチームに分けて行っていることについて
「自分はSチームで練習をやらせてもらっている。1年生の時は、田澤さんと一緒に練習するということは考えられなかったが、田澤さんと一緒に練習をしないと強くならないと思った。月曜日にジョグよりも遅く、ウォークよりも速い練習があるが、その時に総監督に『田澤さんと一緒にやらせてください」と言っている。自分と同じように、田澤さんと練習したいと思っていてもできていない選手は駒大の中には何人もいる。そのような(Sチームでやってみたいという気持ちを持ち、Sチームで少しでも練習をできるようになる)選手が何人もいるチームにすることがひとつの目標だと思う」

◆4区:赤星雄斗(法4)

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(撮影:宮澤希々)

ーー優勝して
「今回全日本に出走するにあたり、前回の出雲や昨年の全日本など、何度も当日変更を経験してきた。その悔しい思いを持って、しっかり今日臨むことができた。4区で爆発的な走りはできないので、良い意味で目立たない走りというのが自分の役割だと思っていた。目立たずに後続にタスキをつなげたので、しっかり今日の役割を果たすことができたと思う。自分としては(距離が)長い方が得意なので、距離が長くなる箱根でもっと勝負ができるように準備していきたい」

ーー練習をチームに分けて行っていることについて
「AチームやSチームで練習ができることに越したことはないが、自分は体があまり強くないため、その時の状態によってAやBを選択して練習をしている。(練習するチームを)ABCDで選べるという点がチームとしての強さだと思う。また、自分の状態に応じて自分自身で考えるという面でも、良いところだと思っている」

◆5区:伊藤蒼唯(政2)

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(撮影:中西真雪)

ーー優勝して
「前回の出雲を踏まえて、今回は前半で相手を抑えて、後半に相手との距離を段々開けていくレースにした。結果として、自分の区間は出雲と比べてレース内容が良かった。後ろから来た吉田響選手(創価大)が区間新を更新をしたため、区間2位と悔しいレースになった。次は箱根があるので、2年連続の区間賞を狙って走りたいと思う。」

ーー練習をチームに分けて行っていることについて
「普段はAチームで練習をやっている。上のレベルの人たちと練習をやっていく中で、普段の練習やポイント練習をどれだけプライドを持ってやれるかを自分は意識している。そういうことは今年に入ってからだんだんできるようになってきた。同級生など、力を持った選手もいるが、入ったときは自分と同じレベルで入ってきた選手もいる。そういった選手には自分が刺激を与えることができていると思っていて、それが相関的につながっているのかなと感じる」

◆6区:安原太陽(地4)

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(撮影:横張日好)

ーー優勝して
「3度目の全日本、3度目の6区で今まで区間賞を取れなかったため、区間賞を取ることを最低限の目標にした。自分の中の設定では37分台を切るペースで走ろうとしていた。前半は落ち着いて走れたが、後半は暑さもありなかなか思うように走れなかったことが課題。次は箱根があるためそこに向けて準備していきたい。6区はつなぎの区間だが、前日に赤星と伊藤と自分で『つなぎの区間だが、ゲームチェンジャーにもなりうる区間』と、しっかり3人で準備していたことが今回の結果につながったと思っている。この次は箱根。前年度から(三大駅伝に)フル出場しており、2年連続三冠で全て走った男になると決めているため、そこに向けてしっかり練習をしていく」

ーー駒大からは久しぶりの6区区間賞だったが
「全く意識していなかった。とにかく3回目なので、自分の記録を抜いていくというのが最低限。区間賞も今回の最低限の目標ラインに設定して走った」

ーー6区の攻略はどういうところにあるか
「2年前は追っていく立場だったので必然的にペースが上がっていったが、1人で走るとなった時、前半で突っ込まずにとにかく冷静に落ち着いて、後半で上げていくことが区間賞を取れた秘訣になったと感じている」

ーー3度6区を走り、どこが1番パワーアップしたと感じたか
「練習の中でも距離的な不安はかなり少なくなっていて、力がついてきたという自信も持っている。自信を持った中で高い目標を設定してそこにキャレンジしていこうと走った結果が出てきたと思っている」

ーー3回目で環境的に変わったことはあるか
「昨年、一昨年は田澤(廉、23年卒、現トヨタ自動車)さんが控えて待ってくいてくださって、とにかく田澤さんがいるから安心して走れるという思いが多少なりともあったが、今回4年生として、芽吹がいて、そのあと後輩の山川(拓馬、営2)が走るという中で、負担をかけずに、4年生としての走りをするっていうことを意識して走った」

ーー3度目にして手にした区間賞だが
「ここで取らなかったら本当に一生後悔すると思ったので、そこだけはしっかりと狙って押さえていこうという思いはあった」

ーー練習をチームに分けて行っていることについて
「普段はAチームで練習している。全体合宿が終わった後の選抜合宿で(鈴木)芽吹や篠原と一緒に練習する機会があった。SABCというレベルを経験する中で、段階的に強くなっていると感じた。(チーム分けがあることで)指標の一つにすることができ、それは底上げにもつながる。自分は入学してきた時はCチームで、少しずつBチーム、Aチームと上がってきた。練習、試合に関わらず常に満足しない、課題を見つける、上を目指していくというところが駒大の強さの秘訣でもあると思う」

――鈴木芽吹選手が試合にいると結果がいいのは、鈴木のキャラクターによるものか
「芽吹はエースで、そこが走れていなかったというのはチームの痛手でもあった。しかし、芽吹が走れなくても他の選手でしっかりと支えていこう、結果を出していこうということは話していた。走れてない、チームを引っ張れなかったという部分に関しても芽吹がすごく責任を感じてたので、そこを少し分散させてあげるということを全体ミーティングで話していた」

◆7区:鈴木芽吹(営4)

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(撮影:大庭瑠晟)

ーー優勝して
「主将としては『一人一人が役割を果たし、冷静にやれば絶対勝てるから落ち着いて走ろう』とみんなに話していた。それを今日みんながやってくれたので、チームとして目指していた『圧倒的な差で勝つ』ということができ、うれしい。2年連続三冠に向け、二冠目を全力で獲りにいけたのはよかった。暑さや向かい風ということは頭にあったが、どうしても田澤さん(23年卒、現・トヨタ自動車)の記録に挑みたいと思っていたため、走り出すと身体が動いてオーバーペースになり、エースとしていい走りができなかった。今回の反省を今後の記録会や箱根つなげていくことが大事だと思うので、切り替えてやっていく。箱根はチームで全力で取りにいきたい。補員のメンバーやエントリー外の部員の中にも箱根を走れる選手はたくさんいるので、みんなで高め合っていきたい」

ーー練習をチームに分けて行っていることについて
「自分は基本的にSチームでやらせていただいているが、今年の7月の合宿に関しては自分自身も思うような走りができていなかった。キャプテンという立場であるため、Aチームで余裕を持ってやる、引っ張っていくという意識でやっていたが、その時にはチームも不調で状態が上がっていなかった。その中で全体合宿で一緒にやれたのは伊藤ぐらいだった。9月くらいから自分がベスト(コンディション)になってきて、それに伴い今のテーマが形になってきた。Sチームは学生に勝つ負けるでなく、どれだけ世界に目を向けられるか、その上でAは学生のトップを取るようなチームであり、他大学とは違った方向性ができていると思う。Sチームの篠原や佐藤は世界を目指す選手なので、個々のペースでチーム全体とは違う練習や行動も入っているが、駅伝シーズンはSチームの中で得たもの、培ったものをチームに還元し、共有して欲しいと伝えている。それを実行してもらえているため、キャプテンとしてもうれしい」

◆8区:山川拓馬(営2)

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ーー今日の調子は
「出雲よりは状態が良かった。8区に選んでいただいたので、しっかりとした走りをしないといけないと思っていた。その中では、まずまずの走りができた」

ーー希望区間は4区と言っていたが、8区として選ばれた時の心境は
「正直8区を任されるのかなと薄々感じていた。藤田監督から8区を任せると言われた際に、4区よりも距離が倍になるが、選ばれたからにはしっかりとした走りをしなくてはと思った。ある程度心構えをしていたので、そこまでの驚きはなかった」

ーー藤田監督は鈴木選手と山川選手に期待を寄せていたが
「まだ自分はエースではなく、ただ外してないというだけ。しかし、外していないということはしっかりと準備ができているということ。駅伝は簡単に外してしまうものなので、これからの駅伝もしっかりと準備をして挑みたい。信頼されているからには、信頼に応えられるようにしなくてはいけない。プレッシャーはあるが、信頼してくれていることはありがたい」

ーーゴールをした際に、両手にピースをしていたが
「昨晩どのようにゴールをしようか考えていた。2連勝と2冠目、4連覇という意味で両手ピースにした」

ーーほかに何か候補はあったのか
「自分の中で考えただけなので特にない」

ーー2年連続で区間賞を獲得したが
「昨年と今年で区間賞を取ることができたのでうれしい。しかし今回に関しては、赤津さんから芽吹さんの間で2分以上の差を広げてくれたおかげ。ほとんどそのおかげで区間賞を取れたので、うれしい気持ちの反面、チームの力は大事だなと思わされた区間賞だった」

ーー区間2位の伊地知賢造(国学大)選手と40秒ほど差をつけた区間賞だったが
「出雲の時から(調子が)上がってきていたので、区間賞を取らなくてはいけないなという気持ちがある程度あった。出雲では30秒の差だったので、今回はそれ以上に差をつけないといけないなと思っていた」

ーー優勝して
「まずは1区赤津から7区の芽吹さんまでが2分以上の差をつけてくれて、前半は自分の中でもかなり余裕のあるペースで入ることができたので、今回区間賞を取ることができた。区間賞を2年連続で4区と8区で取れたのはすごくうれしいことだが、設定タイムよりも10秒ほど遅い結果になってしまい、詰めの甘さや準備不足を感じた。今回は2分以上の差があって自分がとても余裕を持って走れたので、箱根では後の選手に余裕を持たせられるような走りができたらと思っている」

ーー練習をチームに分けて行っていることについて
「自分は去年はBチームで、今年の夏くらいからAチームに上がった。全部のチームに共通して個人的に思うのは、S・A・B・Cと分かれている中で、個々にライバルがいる。駅伝のメンバーも今回だったら8人、出雲なら6人、箱根だったら10人と人数が限られてくる中で『この人ができているからやろう』とか『この人には勝つ』という気持ちが結構ある。Aチームから離れていく人はほぼいない状態で、そういう意識の高さがチーム力が上がっていく要因だと思う」

ーー箱根では山登りをしたいか
「ぜひしたい。山登りをしたいが、状態次第なのでまだまだ分からない。山登りをするという気持ちではいきたい」

◆藤田敦史監督

ーー優勝して
「全日本ということで、4連覇がかかる大学駅伝となった。本当に選手たちが伸び伸びと走ってくれたお陰で2度目の4連覇、そして今年度の2冠目となる優勝を届けてくれた。レースの内容としては、強さを非常に際立てるレースが出来たと思う。他大学に隙を与えることなくゴールまでタスキをつなげることが出来たのは、今の駒大の強さを示せたし、私自身も強いレースができたと思う。選手の方から2年連続三冠を達成したいという話があったので、私の方からも前年度の最強チームだった駒大への挑戦という話もした。記録的には昨年度の全日本の大会記録を更新することが難しくなってしまったが、この気象条件の中でこれだけのレースが出来たことは、強さが非常に際立っていたと感じる。今日のレースに関しては、満点に近い評価を選手たちに与えたい。出雲は出雲を全力で取りに行く、全日本は全日本で全力で取りに行く、次は箱根。ここも我々は負けるつもりはないため、全力で箱根を取りに行って是非三冠を取りたいと思っている。
駒大として出雲駅伝初優勝したのは私がゴールデンルーキーとして駒大に入学してから1997年のことで、この全日本も私が4年生の時の1998年に優勝を経験している。その当時コーチだった大八木総監督に指導をしてもらい、出雲でも全日本でも大学として初めての優勝を経験した。そして今度は私が監督で大八木が総監督となり、新しい選手たちに頑張ってもらって出雲優勝、全日本でも優勝という結果を考えると、なんとなくだが縁をすごく感じた。今回に関しては戦力がすごく充実していたので現場としては勝って当たり前だと思われていたかもしれないが、自分自身はすごく緊張していた。出雲の時もそうだったが、オーダーは事前に選手たちに発表した。今回に関しては応援に入った選手たちも非常にコンディションが良かったので、誰を起用しても勝てるという自信はあった。オーダーを決めた時には、果たしてこの区間配置が本当に良かったのかという気持ちもあった。ただ今日の選手たちの走りを見た時にはその不安は消え、非常に感慨深いものを感じた。私はまだ監督1年目なので、これから選手たちのように様々なプレッシャーを感じながらやっていくと考えると今回の優勝だけでは満足できないし、これからも叶えたい夢はたくさんあるので、そこに向けてチームとしてもう一度気を引き締めてやっていきたい。幸い箱根駅伝までは少し時間があるので、もう一度チームを作り上げていきたい。そして、ここにいない選手たちも箱根駅伝のメンバー争いに加わってくると、また更に層の厚いチームが作れると思っている」

ーー藤田監督のカラーについて
「私のカラーと言うより、選手達に助けて貰っている方が強い。今年の4月に監督に就任してから、大八木総監督と同じことをしていても選手への伝わり方は非常に違うものだと感じていた。そのため大八木総監督の真似をするのではなく、自分なりにコミュニケーションを取ったり、選手に様々な選択肢を与えて考えを擦り合わせたり、同じ方向を向けるようにかなり意識した。しかし大八木総監督が作ってきた土台の上でやらせて頂いている部分が大きいので、やれている感じがある」

ーーコミュニケーションをとることの手応えは
「手応えと言うより、選手にとって大八木総監督より私の方が話しやすい部分は多少なりともあるのではないかと思う。選手時代から大八木総監督に育てていただき、私自身が感じたのは情熱の部分が大きいこと。その部分だけは何歳になっても失わないようにと思っている。大八木総監督が65歳になっても選手の後ろを自転車で着いていく姿を見ていて、私も同じ道を進んでいきたいと考えている。カラーというのは作るのではなく、気が付いたらそういう雰囲気が出ていたというものだと考える。歩み始めたばかりの指導者ではあるが、大八木総監督と同じ情熱を持って一生懸命強くするために選手と接していきたい」

ーー佐藤の区間賞について
「区間賞に対しては非常に良かったし、タイム的にこの暑さの中でのあのタイムは素晴らしいと思う」

ーー出雲で黒田選手と同じタイムだったため佐藤に怒ったことについて
「期待の表れで怒った。目指しているところも違うため、同タイムで取るような選手ではない。アジア大会の疲労があることは誰が見てもわかるが、その中でも圧倒的なタイム差だったら『やっぱり佐藤強いな』という印象を植え付けられる。それが大事。それだけのことを佐藤はやっている。このようなことを大八木総監督や私が言ったため、そこを気にしているのだと思う」

ーーこの1年間で佐藤が成長したポイントは
「考えられる頭ができていた。1年目は言われたことをやることだけだったが、2年目になって自分の考えをが出てきた、それでもまだまだだが。なにより1年かけて駒澤の練習、大八木総監督の練習をやったことでスタミナがついた。スタミナがついたことで外す試合が減った」

ーー駒大が強すぎるという声を聞くが
「大学スポーツというものは学生が入れ替わるため、強い年もあれば弱い年もある。たまたま今の4年生が強い世代でしっかりとしているが、来年には4年生が抜けてしまう。今から色々と考えている」

ーーSチームができたのはいつか
「春くらいからあった。最初は田澤がやることを鈴木もやれという感じだったが、それがいつしかSチームというものになった。練習内容や結果の明確な指標があるため、下のチームの選手たちが『すごいな』ではなく『いずれ自分たちも』という気持ちを持つ。『今はできないからこれくらいはやろう』という当たり前のレベルが高いため練習をしっかりするし、このようなレースになった時に『駒大の練習をしているから他大学には負けない』というプライドが生まれてくる。練習に関しては他大学としていることは変わらない。気持ちの部分で見ているところが違う。そのため、外さないと思う。選ばれた以上は駒大の選手として走るというプライドを持っている。結果を出すために準備している」

ーー箱根の4区以降、出雲、全日本でずっと1位を走っているが
「すごい。2大会連続で抜かれていないのは、選手にあっぱれ。選手が一生懸命頑張った結果。我々は送り出しているにすぎない」

ーー采配もハマっていたと思うが
「選手をよく見ることが良い采配につながると、大八木総監督を見ていて勉強させてもらった。練習の走りやタイムだけでなく、仕草や寮での私生活などの表情を見ることなどが大事」

ーー出雲は緊張で寝れないと言っていたが
「昨日も寝れなかった。今日も車を運転して帰るため深夜になってしまう」

◆大八木弘明総監督

ーーどこで勝ったと思ったか
「7.8区は大丈夫だから、あとはつないでくれれば勝てると思った。3区までで勝負はあった」

ーーチームが底上げされているということか
「今回はつなぎがしっかりとしていた」

ーー4区が不安と言っていたが
「4区は暑さがあった。赤星がそこまで暑さに強い方ではなかったため、不安だった。抑え気味で入ったからなんとか行けるなと思った」

ーー佐藤のことを褒めていたが、レベルが一段階上がったなと思うか
「上がった。練習をキチっとできるようになった。前よりも質の高い練習ができている。インターバルなどのスピード練習は、田澤と一緒にやっている。田澤と一緒に練習ができるようになったため、レベルが上がったと思う」

ーーテレビで田澤は「まだ負けることはない」と言っていたが
「まだ今のところはないが、そのうちは分からないと思う」

ーー佐藤はまだまだ成長していくか
「まだ19歳だし、これからも成長していくと思う」

ーー佐藤がMVPと言っていたが
「今日ミーティングの時に『絶対に区間新を出す』と言い切っていた。あの流れは大きかった。トップに出て、20〜30秒離して行ったことが良かった」

ーー突っ込ませるのは予定通りか
「本人が行くと言っていたので『去年の記録を上回りながら行け』と言った。後半2kmは頑張っていた」

ーーアジア選手権や出雲のダメージは残っていたか
「ダメージはあった。出雲は出なくてもいいと言ったが、本人が出たいと言ったので出した。区間賞タイだったため悔しい思いをしていた」

ーーSチームを設けたのはいつからか
「去年から。田澤が別格だったが、1人だけではなく、もっとそこに近いチームを作ろうとした。それが良い相乗効果となった。鈴木が強くなり、篠原が強くなり、佐藤が来てという形でレベルがとても上がった」

ーーSチームのメンバーは誰か
「今のところは佐藤と篠原と鈴木の3人。その位置に2人くらい上がってくるんじゃないかと期待している。山川や伊藤といった若い選手が、篠原や佐藤らと戦えるようになるとレベルがさらに上がる」

ーー箱根に向けてSチームを増やすことはあるか
「そういうことも大切だと思う。そうしなくては強いチームにはならない。自分たちが区間賞を取るのは当たり前という気持ちでみんながレースに臨むためにも、Sチームは大事」

ーーSチームが安定して走っているが
「Sチームが安定して走らないとチームが勝てない。Sチームは最低でも区間2位以内と言っていた。そのため鈴木は3位になり、悔やんでいる」

ーー田澤がチームから抜ける中で他の選手の変化はあったか
「変化というより『俺たちでやらなくてはいけない』という熱さがあり、全員で底上げしていこうという雰囲気だった。ほかの選手たちも、篠原や鈴木と一緒に練習をやりたいと気持ちになってきている。Aチームの中の質が上がったと思う」

ーーメンバーの配置は藤田監督が決めているとおっしゃっていたが、新監督から見てその決断はどうか
「良い決断をしている。色々な判断材料を藤田自身が持って、最後に決断している」

ーー昨日の時点では花尾恭輔選手(商4)を箱根に向けて使いたいと言っていたが
「それはそう。とにかく花尾は箱根で使わないといけない。練習は既に始めており、順調に上がってきている。今ここで使って体調を崩すより、しっかりと箱根に向けて練習を積んだ状態で挑んでほしい」

ーー今回花尾選手を控えとしたのは藤田監督の決断だったのか、それとも相談があったのか
「藤田が外すと言った。私はそれに対して『良いと思う』と伝えた」

ーー藤田監督は、すごい監督になりつつあるのではないか
「今は良いが、これをあと何十年と続けられるか。まだまだこれからであるが、良い監督になると思う。少し私自身も休みたい気持ちがある」

執筆者:大塩希美、若山穂乃佳

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