音高体系
各周波数に固有の音名と役割を与え,理論内での位置づけを記述します.
RESEARCH OVERVIEW
任意の周波数列を入力として,各音の役割,和音,旋律パターン,和音進行を大規模言語モデル(LLM)によって構造化し,新しい音楽理論の候補として提示する研究です.
01 / CONCEPT
本研究が対象とするのは,微分音を含む任意の音高体系に対する音楽理論候補です. 既存の12平均律や長短調を前提とせず,入力された周波数列そのものを出発点として, 各音の名称・役割,音同士の機能的関係,和音,旋律上の音高遷移,和音進行をLLMによって構造化し,その後の人との協働による音楽理論構築に繋げます.
音名,音の役割,音高間の関係,和音,旋律の音高パターン,和音進行
リズム,音価,テンポ,音色,強弱,歌詞,楽曲形式などは,現状では本研究の生成対象には含めません.
各周波数に固有の音名と役割を与え,理論内での位置づけを記述します.
複数音の組合せから,中心,接続,緊張,解決などの機能を持つ代表的な和音を選択します.
音同士の遷移を,接近,離脱,緊張形成,解決などの機能として構造化します.
生成された和音間の関係から,展開,接続,解決,終止に相当する進行を記述します.
LLMが出力する音楽理論は,入力された音高体系から音楽的な規則を考えるための初期候補です.実際の作曲,演奏,聴取評価を通じて,人間が検証・修正しながら更新していくことを想定しています.
02 / PIPELINE
周波数列の取得,音響特徴量の計算,LLMによる構造化,試聴・演奏までを一つの生成フローとして扱います.
手動入力または音素材から代表周波数を取得
最低音基準で1オクターブ内へ折り畳み,昇順化
不協和度からStability / Tensionを算出
音名・和音・旋律・進行・説明文を生成
試聴,演奏,作曲,評価,対話的更新
03 / REPRESENTATION
生成結果は,機械処理に適したJSONと,人間が内容を理解するための自然言語説明の2つの形式で出力します.
{
"theory_name": "...",
"pitches": [...],
"chords": [...],
"melodic_patterns": [...],
"chord_patterns": [...]
}理論名の由来,音高体系の特徴,各音・和音の役割,旋律や和音進行の特徴,作曲・演奏時の指針までを日本語で説明します.
Webページ,論文,教材,理論解説ドキュメントへ転用できることを想定しています.
04 / EXAMPLES
入力する周波数列の由来が異なると,生成される音名,和音,機能的関係も変化します.
| 理論名 | 周波数列の由来 | 音数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Gravitonal Theory | LLMで生成した周波数列 | 5 | Ga,Ve,Li,No,Ziを中心とした基礎的な生成例.生成理論を用いた作曲・演奏にも展開. |
| 双錨環流律 | ラップ音声の基本周波数分布 | 7 | ラップのフロウに含まれる音高傾向から,複数の安定点と循環的関係を持つ理論を生成. |
| 黒翼双錨律 | カラスの鳴き声 | 5 | カラスの発声音高から代表周波数を抽出し,それを基に音楽理論を生成. |
| 翠啼双峰律 | ウグイスの鳴き声 | 5 | ウグイスの鳴き声に現れる複数の周波数ピークを基に,独自の音名と和音機能を生成. |
05 / CASE STUDY
本研究の初期例として生成した5音からなる音楽理論です. Gravitonal Theoryを生成した2026年5月時点では,現在の手法で用いている 安定度 / 緊張度などの音響特徴量の計算は生成パイプラインに実装されていません. そのため,周波数列を起点としてLLMが音名・役割・和音・旋律パターン・和音進行を構造化した 初期的な事例として位置づけています.生成された規則は,その後,試聴,演奏,楽曲制作へ展開しました.
| 音名 | 周波数 | 概要 | 試聴 |
|---|---|---|---|
| Ga | 440 Hz | 理論を構成する基礎音の一つ | |
| Ve | 495 Hz | 他音との接続に用いられる音 | |
| Li | 528 Hz | 和音・旋律の中間的関係を形成 | |
| No | 660 Hz | 高い安定性を持つ中心的構成音 | |
| Zi | 742 Hz | 上方の音域を特徴づける構成音 |
各音はWeb Audio APIによるシンプルな音色で試聴できます.
Ga – Li – No
最も安定した中心和音.終止や中心への帰還に用いる.
Ve – Li – No
中心へ向かう方向性を持つ遷移和音.和音間の接続を担う.
Ve – No – Zi
Ziを含む浮遊感と緊張を持つ和音.C-GLNへの解決を促す.
Gravitonal Theoryの音高,主要和音,旋律パターン,和音進行を,本研究の構造化形式で記述したサンプルです.
Gravitonal Theoryの音高体系と和音・旋律規則を用いて制作した楽曲例です.
07 / INTERACTIVE PROTOTYPE
周波数列の入力,音素材からの周波数抽出,Stability / Tensionの計算,LLMによる音楽理論生成,試聴・演奏,対話的な理論更新を一つの画面から試すためのプロトタイプを開発しています.
現在,Webアプリケーションは学会発表時のデモ用のみの公開としています.一般公開開始時にはこのページからアクセスできるようにする予定です.
08 / PERSPECTIVE
従来の音楽情報処理では,既存の音律や調性体系の中で旋律・和音・楽曲を生成することが多く行われてきました.本研究では,その前段階にある「どの音を使い,どのような関係を与えるか」という理論体系そのものを生成対象として扱います.
これにより,環境音,動物音声,発話,歌唱,任意の録音素材などから得られた周波数構造を,新たな作曲・演奏規則へ変換する「メタサンプリング」の可能性を検討しています.
09 / CITATION
本ページで紹介している音楽理論生成手法を研究・発表等で参照する場合は, 以下の研究報告を引用してください.
平井辰典:「LLMによる任意の周波数列からの音楽理論の生成」,情報処理学会研究報告 音楽情報科学(MUS),Vol.2026-MUS-147,No.49,pp.1–15,2026年8月.
@article{hirai2026llmMusicTheory,
author = {平井 辰典},
title = {LLMによる任意の周波数列からの音楽理論の生成},
journal = {情報処理学会研究報告 音楽情報科学(MUS)},
volume = {2026-MUS-147},
number = {49},
pages = {1--15},
year = {2026},
month = {8}
}