大井翔太 2007年5月11日
宇井洋『なぜデルコンピュータはお客の心をつかむのか』ダイヤモンド社 2002年
デルコンピュータが成功したのは顧客サポートに力を入れてきたからである
✪デル・ダイレクト・モデル
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BTO[1]と直販方式を結合した新しいビジネスモデル
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独自のSCM[2]による業界屈指の低在庫水準
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1台1台仕様が異なる製品情報は、受注と同時に社内のデータベースに蓄積
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業界屈指の低在庫水準(4日)により最新の技術をいち早く低価格で提供することが可能
✪カスタマー・エクスペリエンス
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経営目標の核として全社的に追求
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独自の顧客満足度を表すコンセプト
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生産者主導のモノ作りから消費者主導のモノ作りへ
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顧客の4つの体験(購買、配送・納品、セットアップ、使用経験)の全てにおいて最高の満足体験を与える
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オーダーステータス(納期自動回答サービス)の導入
→「生産準備」「製造工程」「国際出荷済」「国際輸送中」「日本到着済」「配送センター出荷済」
の6段階に分けられている。ホームページや電話の音声認識システムにオーダーナンバーとパスワードを入力すると、製品がどの段階にあり、納期予定日はいつかを教える
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オーダーウォッチ(出荷通知サービス)の導入
→上記の「配送センター出荷済」段階になると顧客にファックスやメールで通知
☆ダイレクトサポート(アフターサービス)
●テクニカルサポート
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デル商品には保証書がない
→保証内容、修理履歴をデータベースで管理するため保証書を添付する必要がない
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使えない時間を短くする
→ダウンタイム[3]の短縮
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コールセンターで電話を受けるのは電話交換手ではなくエージェント
→最初に電話の対応をするオペレーターがすでに問題を解決出来る能力を持ったエンジニア
職名もオペレーターではなくエージェント(処理能力を持った技術者)
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オペレーター採用基準は技術<コミュニケーション能力
→顧客はテクニカルサポートで得た体験すべてで満足度を判断するため、仮に問題が解決しなくても『ここに電話して良かった』という気持ちにさせるのが大切
●テクニカルサポートの課題
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検索機能の強化
→「CB Search」[4]を採用。これによって自然文を曖昧検索できるようになり、1回の検索で幅広い情報を拾うことが可能になった
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コンテンツの整理
→「CB Search」採用後、5つ以上あったファイル・サーバーから一括検索が可能になった
●CTIシステムの導入(図1)
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個人顧客、法人顧客、デスクトップ、ノートブックの4つにグループ分け
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各オペレーターの能力をデータベースに登録
→これによりオペレーターの得手不得手を把握し、電話につなげる優先順位を付けることが可能
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初期段階(1ヶ月以内)の問い合わせはハイレベルのオペレーターに優先的に繋がるように設定
●修理サービスプログラム(図2)
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オンサイト(出張修理サービス)
→電話でトラブル状況を確認し、必要な部品を特定した上でエンジニアを派遣
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コレクト&リターン(引き取り修理サービス)
→電話でトラブル状況を確認し、指定先で宅配業者が引き取り、リペアセンターで修理後、5営業日以内に返却
●顧客ごとにカスタマイズした専用ウェブページを提供(プレミアムページ)
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御社向け標準機構成→顧客専用の使用機のみをカタログ表示。価格も顧客ごとのものを表示
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ショッピングカート→顧客の用途、予算に合わせた最適なシステムの見積書を瞬時に発行
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納期→購入前および購入後の納期情報
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サポート情報→顧客の購入した個別のパソコンに特化したサポート
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製品技術情報→米国本社の技術者が入手した最新情報を掲載
まとめ
全体を通してデルコンピュータがパソコンの世界No.1ブランドになったか、その成功の秘密が書かれていた。終始一貫して言っているのが、先に説明した「デル・ダイレクト・モデル」を根底とした「カスタマー・エクスペリエンス」である。
顧客満足を営業目標の念頭に置いたやり方でデルコンピュータは世界トップブランドになったと言っても過言ではない。
補足資料
図1 CTIシステムのフロー 図2 サポートのフロー