【紙面連動企画】三大駅伝皆勤へ 2年生独占インタビュー
陸上部2年の伊藤蒼唯(政2)、佐藤圭汰(経2)、山川拓馬(営2)は、10月の出雲、11月の全日本に出走し、チームの二冠に貢献した。最終目標である2年連続三冠に向け日々練習に励む3人に、ことし1年の総括や箱根に向けての意気込みなどを聞いた。(聞き手:宮田瑞希)
※インタビューは12月上旬に実施しました。
ーー出雲、全日本を振り返って
山川「出雲は初出走で全日本は2回目だった。チーム的には優勝できて2年連続3冠へのいい踏み出しになったが、個人的には自分の弱さが出るレースだった」
ーー出雲では日本人トップ、全日本では区間賞を獲得したが
山川「日本人トップや区間賞を取れたことは嬉しいが、設定タイム通りに走れなかったり、途中でたれてしまうレース展開になってしまった。まだまだ課題はある」
佐藤「出雲はアジア大会(10月4日、中国・広州)の直後だったのでしっかりと走れるのか不安はあった。状態は悪かったが、区間賞を取って山川に渡すという最低限のことはできた。欲を言えば黒田(朝日、青学大)選手ともう少し差を広げたかった。全日本ではその悔しさを晴らすことができた」
ーー全日本では大会MVPを獲得したが
佐藤「区間新という目標を達成できて、大会MVPを獲得できた自分の走りができたのは、1区の赤津さんがいい順位で繋げてくれたからだと考えている。自分の力だけでなく、チームのおかげ。うれしかったが、ここで満足することなく箱根に向けてやっていきたい」
伊藤「ことし初めて出走した出雲は地元ということもあり、いい走りをしようと思っていたが、緊張が強くなってしまって区間3位という成績になった。その悔しさを晴らしに全日本に臨んだ。出雲では前半突っ込んで後半上がりきらなかったので、全日本では最初の方落ち着いて入り、出雲よりはいいレースができた。だが、ゴールしてわかったのは後ろの吉田(響、創価大)選手が区間新記録で走り、差を30秒くらい縮められていたこと。まだまだ実力不足だと感じた。これで終わるのではなく、来年は実力をつけた上で平地を走りたい」
ーー出雲では地元凱旋をかなえたが
「反響はあった。地元の方からもすごい応援をもらっていた。大学で駅伝を走るという目的で東京に来ているので、自分にとっても地元の方にも大きな一歩だった」
ーーこの1年で記憶に残っているレースは
山川「駅伝ももちろん記憶に残っているが、5月の関東インカレ(2部男子ハーフマラソン)が特に印象に残っている。赤星(雄斗、法4)さんが1位でワンツーフィニッシュしたが、1番を取りにいったレースで2番だった悔しさがある。関カレで駒大の強さを証明できたことはよかった。ハーフマラソンはごまかしが効かない。練習しなかったら、その分レースにあらわれる」
佐藤「10月のアジア大会5000m(中国、広州)が印象に残っている。大会前の菅平選抜合宿ではいい感じに練習を積めていたので、自信を持って臨めた。しかし、いざスタート地点に立つと、国際大会独特の雰囲気に流されてしまった。アップの時から海外選手を見て自信がなくなり、緊張しすぎて今までの自分ではないみたいだったし、レースもいい結果が出なかった。国際大会で勝負していく上では、どれだけいい練習をしてきたとしても、海外選手におびえたり、海外の雰囲気に流されてしまっては勝負にならない。これから海外での経験を増やしていき、海外のレースでも自分の思い描くレースができるくらいメンタルを強くしていきたいと思えたレースだった」
伊藤「箱根の6区が印象に残っている。いい結果ばかりにフォーカスしすぎるのもよくないが、6区で区間賞を取れたというのは、自分の陸上人生の転機になった。箱根があったおかげで、駒大で主力選手として結果を残さなくてはいけないという考えになれた。大舞台で結果を出せたという面で、印象に残っている」
ーー12月2日の日体大長距離競技会では、帰山侑大(現2)と森重清龍(社2)、大和田貴治(地2)が5000mの自己ベストを更新したが
山川「帰山が13分37秒と、今までの自己ベストから30秒以上更新して、ようやく2年生で13分台が4人目になった。森重もどんどんタイムが伸びてきた。ようやく2年生も去年に比べて成長してきたと感じる。こういうふうにタイムが上がると、(駅伝の)メンバーに入るのがより厳しくなると思うが、チーム内でライバルが増えることによってよりチーム力が上がり、自分たちにとってもプラスになる。チーム力をあげていきたい」
佐藤「帰山が13分30秒台を叩き出した。13分台はいくと思っていたが、30秒台は予想していなかった。(13分)37秒を出したことは自分としても嬉しかった。森重も大和田も順調に自己ベストを更新していて、各々のペースで成長していて自分も頑張らなくてはと思う。帰山に関しては駅伝メンバーを争えるくらいのインパクトを残し、3人(佐藤、伊藤、山川)のモチベーションにもなった。2年生全体に勢いを持たせてくれた日になってよかった」
伊藤「帰山は元々箱根6区を希望していて、6区出走を争うライバルでもあった。あのタイムを出されて正直焦った部分があったが、(ベストを)出してくれるに越したことはないし、自分も頑張ろうと思った。森重と大和田も自己ベストを更新していて、練習の成果が目に見える形になるのは2年生の盛り上げにもなる。全体的に足並みが揃ってきたと感じた。これからも浮かれすぎることなく、2年生全体で上がっていきたい」
ーーことしも帰山との6区争いになると思うか
伊藤「なってくれたら嬉しい。直前まで何があるかわからない。ライバルではあるが、どちらが走ることになってもいい状態まで持っていきたい」
ーー自分の性格を一言で表すと
佐藤「自分はマイペース」
山川「チャレンジ精神があります」
伊藤「天然だけど冷静らしいです(笑)」
ーー尊敬している先輩はいるか
佐藤「今年の世界陸上5000mで優勝し、東京五輪でも1500mで優勝したノルウェーのヤコブ・インゲブリクトセン選手一択。高2くらいからずっと目標にしている。彼のすごいところは、どんなレースでも本領を発揮するところ。長距離はアフリカ系の選手が強いが、その中でも引けを取らない強い走りをしていて全てがかっこいい。自分もゆくゆくは世界陸上やオリンピックで戦いたい。先輩だと田澤(廉、23年卒、現・トヨタ自動車)さん。他大は洛南高(京都)の先輩である三浦龍司(順大)さん。自分は1年間だけ三浦さんと一緒に過ごした。普段は普通の高校生だが、競技になると雰囲気が変わってメリハリがきちんとされていた。大学に入ってからも話す機会があるが、世界だけを意識されている感じがする。ことしはキャプテンになり駅伝もさらに大事にされているが、基本は世界を見ている。自分も常に世界を意識できるような選手になりたい」
山川「母校である上伊那農業高(長野)出身の伊藤国光さんに憧れている。伊藤さんは努力で世界に行った人。長距離は走り込みが多いが、走って通学するなど、地道な練習をコツコツと積んでいたという話を聞いた。伊藤さんの話や経歴を見て、努力していればその努力は報われると思ったので、伊藤さんのようになりたい。安定した走りという点で見ると、全てのレースが安定して走れるというところで、花尾(恭輔、商4)さんに憧れている」
伊藤「現役だと(鈴木)芽吹(営4)さん。タイムもだが、人間として尊敬している。チームを盛り上げてくれるし、競技面でも引っ張ってくださるので、チームにとって欠かせない存在。大きいけがをしてから地道にトレーニングをして、去年の出雲では区間賞を取った。大変だったと思うが、結果を出された。芽吹さんのような地味な努力ができる選手に自分もなりたい。OBだと、昨年卒業されたキャプテンの山野(力、現・九電工)さん。自分たちが入寮してから過ごしやすい雰囲気を作ってくれたのは山野さん。2年後には自分たちがチームを引っ張っていく立場になる。チームの雰囲気をよくしてくださった先輩をまねしたい」
ーー箱根に向け、特に意識して練習していることは
山川「箱根は5区を希望している。自分と言えば山登りなので、ジョグでは上り坂を見つけて、上りを取り入れながら走っている」
佐藤「ジョグが1番多い練習なので、いかにジョグを効率よくできるかが大事だと思っている。調子がよくない日はペースを落として練習をして、余裕がある日はペースを上げて距離を稼いだりする、アップダウンを激しくして脚力をあげている」
伊藤「箱根は去年6区を走ったので、今年も走るなら6区を走りたい。下りに慣れないと6区は走れないので、下り坂を見つけて走り方を考えるなど、自分に合ったフォームを見つけることを日頃のジョグでやっている」
ーー箱根への意気込み
山川「2年連続三冠まであと一歩。そこに少しでも貢献したいし、するためには区間賞は必須。後続をどれだけ離せるかが鍵になってくる。そこを考えて箱根は頑張りたい」
佐藤「前回大会を走れなかった悔しさがあるので、スタート地点に立つまで油断しない。体調面も気をつけながら練習していきたい。どの区間を走るかわからないが、任された区間で絶対に区間賞を取りたい。区間によっては区間新や日本人最高記録をねらいたい。チームの2年連続三冠という目標に、走りで貢献したい」
伊藤「個人としては、去年に引き続き区間賞を取る、区間新記録にチャレンジすることを目標にやっていきたい。チームとしては、2年連続三冠まであと1つ。ここまで来たら勝たなくてはいけないチームだと思っている。各区間の選手はもちろんだが、それ以外のサポート選手も含め、全員でやるべきことをしっかりやって優勝を勝ち取れるようにしていきたい」
ーー箱根ではどんな応援が聞こえてくるとうれしいか
佐藤「シンプルに頑張れがうれしい」
山川「名前を呼んで頑張れって言ってもらえるとうれしいよね」
伊藤「自分は当日変更で6区を走ったので、あまり名前を呼んでもらえなかった。沿道の人にずっと帰山と呼ばれていた(笑)。顔と名前を覚えて、自分の名前を呼んでもらえたらうれしい」