硬式野球部

DATE:2023.11.15硬式野球部

1部2部入替戦、運命の第4戦はタイブレークの末駒大が劇的サヨナラ勝ち 最短での1部復帰を決める

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1部昇格を決め胴上げされる大倉監督(撮影・熊木桃)
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3点本塁打を放つ大森(撮影・中島健士郎)

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好投で勝利投手となった本間(撮影・井上義郎)
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サヨナラにつながる適時打を放つ原(撮影・武藤亘輝)

東都大学野球秋季1部2部入替戦対東洋大4回戦が11月14日、明治神宮野球場にて行われた。

 1勝1敗1分で迎えた第4戦。マネージャーによるじゃんけんの結果、浦川尚希(営4)主務が後攻を勝ち取る。勝ったほうが1部昇格となる一戦は初回に⑤大森廉也(法4)の内野ゴロで先制に成功する。先発の髙井駿丞(経3)は緩急をつけた投球で東洋大打線を寄せ付けない。6回に⑤大森が右翼席へ3点本塁打を放ち、4点のリードを奪うも、7回と9回に2点ずつ奪われ、4-4の同点に追いつかれる。延長10回表にパスボールで1点を失うも、裏の攻撃で代打の原尚輝(営2)が2死一、二塁から同点の中前適時打を放つと守備の乱れに乗じて一塁走者橋口采生(法4)もサヨナラのホームに生還。連日の延長タイブレークとなった一戦は駒大が6-5で死闘を制し、最短での1部復帰を決めた。

結果とメンバー(駒大のみ)は以下の通り。

チーム/回12345678910
東洋大 0 0 0 0 0 0 2 0 2 1 5
駒大 1 0 0 0 0 3 0 0 0 6

◆打者成績
守備位置選手
1 (6) 髙田 4 1 0
2 (D) 岩本 2 0 0
5 工藤 0 0 0
3 (5) 渡邉 4 1 0
4 (3) 神宮 2 0 0
5 (8) 大森 4 1 4
6 (7) 三浦 4 0 0
R 橋口 0 0 0
7 (9) 増見 4 0 0
8 (4) 角田 3 0 0
H 西田 1 0 0
9 (2) 薩美 3 0 0
H 1 1 1

◆投手成績
投手被安自責
髙井 5 17 1 0
山川 2 10 2 2
東田 1 8 2 2
○本間 2 7 0 0

◆戦評

木枯らし1号が吹き荒れる寒さにも負けない熱戦が続く入替戦。明治神宮大会の開会式が同日、明治神宮会館で行われることもあり、スタンドには出場する高校野球チームの姿もあった。

 駒大の先発は入替戦4戦中3試合目の先発となる髙井。昨日までに3試合に登板し200球近くを投げ込んでいる。ブルペンでは初回から仲井慎(法1)などが準備する。4連投となった髙井だったが、上々の立ち上がり。初回から2つの三振を奪い三者凡退に抑える。

 東洋大先発の岩崎は入替戦1戦目で駒大打線を完璧に封じている。打線は立ち上がりを攻める。1死から②岩本皓多(経4)が出塁すると、続く③渡邉旭(現2)が中安打、④神宮隆太(市4)も死球で繋ぎ1死満塁に。⑤大森が弱い当たりの二ゴロを打つと三塁走者岩本が生還。1戦目では岩崎の前に手が届かなかった1点を先制する。

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先制のホームを踏んだ岩本(撮影・廣岡良祐)

 髙井は低めへの丁寧なコントロールでカウントを整えると、チェンジアップで空振りを奪う安定した投球を披露。髙井は5回を投げて無失点、被安打1、奪三振7、四死球0の圧倒的なピッチングで、一度も得点圏に走者を許さなかった。入替戦全試合に登板(うち3試合は先発)し、計255球を投げ抜いた。2部リーグ最優秀投手賞に輝いた大エース髙井はまさに獅子奮迅の活躍だった。

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髙井に声をかける捕手薩美(撮影・中島健士郎)

 2回以降、1人の走者も出していなかった駒大だったが、6回裏に試合が動く。先頭の①髙田祐輝(政4)が中安打を放つと2死から⑤神宮が死球で出塁し、一、二塁に。第一打席で先制の内野ゴロを放っている⑤大森が内角のボールを捉えると、打球は右翼手の頭上を高々と越える3点本塁打に。ベンチ前でチームメイトやブルペン陣にもみくちゃにされながら出迎えられた。

6回からは山川大輝(営3)が登板。6回こそ三者凡退で抑えるも、7回はボール球が先行する。先頭の③石上(東洋大)に二塁打を浴び、得点圏に走者を背負うと四球と犠打で1死二、三塁に。代打嶋村(東洋大)の遊ゴロで1点を返されると、続く代打馬場(東洋大)に1点右前安を許し2点差に迫られる。ブルペンでは東田健臣(商3)や石川永稀(営2)が準備する中、山川は⑨吉田(東洋大)を見逃し三振に抑え、失点を2点で留めた。

8回からは東田がリリーフするも、コントロールが定まらず2つの四球と内野安打で1死満塁のピンチを招く。一打逆転の場面であったが、⑤橋本(東洋大)を遊併殺打に打ち取り、絶体絶命のピンチを脱する。9回表、この回を抑えれば1部昇格が決まるが、一筋縄では行かない。先頭の⑥嶋村に左前安を許すと、犠打の構えをする⑦馬場に死球を与え、一、二塁に。⑧鈴木(東洋大)に対してはフルカウントとすると、東田は大きく息を吸い落ち着きを取り戻そうとする。鈴木に投じた8球目の直球は僅かに低めに外れ、痛恨の四球を与えてしまう。東田は目元を赤く腫らしながら、無念の降板となった。

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無念の降板となった東田(撮影・小川裕貴)

代わって登板したのは2戦目で先発のマウンドに上がっている本間葉琉(法1)。一打逆転の場面であったが、威力のある直球で後続の打者を3つの三ゴロに打ち取る。しかしその間に2点を失い、4-4の同点に追いつかれる。

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軽快に打球をさばく工藤(撮影・小川裕貴)

9回裏、駒大の攻撃は④神宮からだったが三者凡退に倒れ、2日連続となる延長タイブレークに突入。10回表、本間は③水谷を左飛に打ち取ると、④宮下の内野フライを一塁手神宮が仰向けに倒れ込みながらも捕球し2死一、二塁に。しかし⑤宮本(東洋大)に四球を与えて満塁にすると⑥嶋村に投じた5球目がベースの手前で大きく跳ねる暴投に。ついにリードを許す。なおも二、三塁の場面であったが中飛に抑え、最小失点で切り抜けた。

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空中に浮きながら捕球する神宮と驚く本間(撮影・熊木桃)

10回裏、逆転での1部昇格を信じる駒大。先頭の増見優吏(社1)が犠打を試みるもファールと空振りで追い込まれ、3球目のフォークに手が出て空振り三振。続く西田翔哉(法1)も見逃し三振で万事休す。大倉孝一監督は代打に今季ブレイクした原を、一塁走者⑥三浦颯斗(法4)に代えて代走のスペシャリスト橋口を送る。初球を空振りした後の2球目、「真っ直ぐだけを待っていた」という直球を弾き返すと、鋭い打球は二遊間を抜けてセンターへ。二塁走者の⑤大森が生還し同点に追いつくと、相手野手陣の守備の乱れをつき、一塁走者の橋口がサヨナラのホームへ頭から飛び込んだ。これにより1部昇格が決まった。

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サヨナラのホームに生還した橋口(撮影・為我井侑未)

ホームベース付近には歓喜の輪が形成され、ヘルメットや帽子が飛び交った。入替戦を投げ抜いた髙井は両手で顔を覆うと、輪の外側で大の字になり、仰向けに倒れ込みしばらく立ち上がることが出来なかった。

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全力で喜ぶナインと帽子を投げる髙井(撮影・小川裕貴)
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天を仰ぐ髙井(撮影・小川裕貴)

試合後に校歌とエール交換が終わると、部員たちは一目散に一塁側スタンドへ。記念撮影と岩本主将と大倉監督の胴上げがされた。「最高の応援だったぞ」と大倉監督が応援指導部ブルーペガサスと部員たちを労った。

この試合をもって、来年春季リーグからの駒大の1部復帰が決まった。春季リーグで最下位に沈み、入替戦で2部に降格してから4ヶ月。「選手全員が横一線の状態」から大倉監督が抜擢した新戦力が多く活躍したリーグ戦の勢いを感じさせる入替戦だった。低学年の選手も多く活躍。本間は1年生ながら先発のマウンドを任され、4戦目では厳しい場面でのリリーフを経験。増見はスタメンに抜擢される活躍を見せると、原が第4戦でサヨナラ打を放った。勝樂剛琉(法1)も3戦目のタイブレークの場面を守り抜いた。
入替戦をもって引退する四年生も多く活躍。林裕也コーチは「四年生が様々な場面で本当によく頑張ってくれた」と四年生をねぎらった。親指を骨折していた岩本は指の状態が悪化していたものの、打席に立ち続けた。安打こそ出なかったものの、七つの四死球を選びチームの勝利に貢献。主将として1部のバトンを後輩へと託した。

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部員たちを盛り立てる岩本主将(撮影・廣岡良祐)

薩美進之介(法4)は投手への積極的な声掛けや、経験豊富なリードでチームを引っ張り、第2戦では2点適時打も放った。学生コーチ出身の三浦はベストナインを奪取したリーグ戦の活躍そのままに、入替戦でもその打棒を発揮。第2戦でチームを救う3点本塁打を放った。大森も復活を印象付ける活躍を見せ、第4戦では1部昇格を大きく手繰り寄せる3点本塁打を放った。副将の髙田はトップバッターに抜擢されると攻守に存在感を発揮。神宮は第2戦で適時打を放つと、安定した一塁の守備も見せた。橋口は代走のスペシャリストとして第2戦と第4戦に出場し、1部昇格を決めるホームを踏んだ。戦いの舞台を1部リーグに戻した駒大野球部の活躍から目が離せない。

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試合後の集合写真(撮影・中島健士郎

◆インタビュー

◆大倉孝一監督

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大倉孝一監督(撮影・橋本佳達)

――劇的な勝利で1部昇格を決めたが
「どうなるかわからない試合で、長い間監督をしていてもこの3日間はあり得ないと思った」

――試合を代打原が決めたが
「バントをさせた増見、次の打者の西田も1年生だったが任せるしかなく、今まで試合に出ていた原に最後を任せた」

――第2戦の5点差を追いついてからの快進撃で1部昇格となったが4日間を振り返って
「2日目追いついたから、3日目タイブレークで勝ったからではなく1イニング1イニングを積み重ねるしかないことを始まる前から伝えていたので、追いついたこと、タイブレークで勝てたことも1イニングの積み重ね。今日も4点リードしているからではなく1イニング1イニングの積み重ねが10回に繋がったと思う」

――今春2部に落ちて、最短復帰した選手たちの成長をどう思うか
「成長というより、課題が多いから2部に落ちた訳であり、課題克服に向けて1つずつやらなければいけないことを前向きに4ヶ月半頑張ってくれた」

◆岩本皓多(経4)

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岩本皓多主将(撮影・橋本佳達)

――(勝利して)率直な思いは
「4年生の代で2部に下げてしまったので、自分たちが責任を持って後輩たちに1部でバトンパスしようと言ってきたのでよかった」

――追い詰められてからの逆転だったが、勝利の瞬間どんなことを思ったか
「相手のミス絡みだったが、橋口が帰ってきた瞬間嬉しくて飛びついた」

――春から最後1部昇格を決めて、キャプテンとしてどのようなチームだったか
「みんなにたくさん助けてもらって、駒澤でキャプテンをしてよかった」

――来春、後輩たちに期待すること
「目指す野球は変わらず、後輩たちにもできると思うので頑張ってもらいたい」

――実際に苦しかったことは
「1部で目指している野球ができなくて負けたので、自分たちの野球を試合でできるようにするために毎日練習した。プラスとして私生活をもう一度正そうということから寮生活など様々なことを一から正してやってきた」

◆原尚輝(営2)

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左:原尚輝選手 右:岩本皓多主将(撮影・橋本佳達)

――最後の打席を振り返って
「バットが折れたが、何が何でもという気持ちで入った。チーム全員が繋げてくれた打席だったのでその思いがヒットになったと思う」

――センターに抜けた瞬間の思いは
「ランナーが帰ってくれたらいいなというところとこの入替戦でノーヒットだったのでくらいつくという気持ちだった。打席に入る前に高田に、後ろにいいバッターがいると声を掛けられ、楽に打席に入れた」

――サヨナラを決め、4年生の姿を見ての思いは
「春に2部に落ちてから4年生の苦しい姿を見て、最短1部昇格に向けてキャプテンや4年生を中心に全員でやってきたので4年生と共に野球ができてよかった」

――来春の目標は
「1部残留が目標となる。入れ替え戦を経験したので自分がチームの中心となる自覚と責任を持って、岩本のような強い男になりたい」

――打席の中での具体的な狙いは
「真っすぐだけを待っていて、速くも感じなかったため、タイミングをしっかり合わせてセンターに振りぬくことだけを考えていた」

執筆者:小川裕貴

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