メコン便り(上) |
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佐藤哲夫
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5月15日から、イサーン(東北タイ)のトップ校であるコンケン大学を拠点として、在外研究を始めました。コンケンには毎年何回か来ていますが、田植えの季節に来たのは久しぶりです。タイでは、今年の夏(3,4月)は大雨の降る異常気象だったようですが、もともと降水量の少ないイサーンでは、大きな被害は出なかったようです。灌漑の整った二期作地帯では、穂の色づき始めた黄色い田と、緑の鮮やかな苗代、そして耕起の準備に入った赤土の田がパッチワークのように錯綜し、カラフルな景色を見せています。 さて、出発が遅れたため、駒澤大学の皆さんにご迷惑をおかけしましたが、コンケン大学でも5月末からは新年度の授業が始まったので、共同研究者であるセクサン先生との最初の調査もあわただしいものになりました。15日夜、アパートに荷物を置くと、翌朝にはラオス南部に向かうことになり、イサーン南東部にあるウボン大学の歴史の先生と合流して、ラオスのチャンパーサック県に入りました。今回の在外研究の研究対象地域はメコン川の中流域ということになっています。メコン川は、北タイゼミの活動地にも近いゴールデントライアングルから下流を、大部分がタイとラオスの国境として流れますが、一部では国境を離れてラオス国内を流れます。それらの地域にタイの主権が及ばなくなったのは、1904年のフランスとの条約締結以後のことですから、100年ほど前のことにすぎません。もともと自然的にも文化的にもタイと連続している地域ですし、現在、ASEAN内部でのヒトやモノ、おカネの流れが国境を越えて活発になっていることから、それらの地域とタイとの結びつきはますます強まっています。その辺りのことを少し勉強してみるのも、今回の在外研究の目的の一つです。 調査の詳しい報告は別の機会にゆずりますが、ここではその時の調査で訪れたコーンの滝の写真を掲載しておきます。メコン中流域は、安定的な比較的古い地塊の上に広がっており、ケスタやメサなどの地形が見られる地域です。メコン川の中にも、岩礁や瀬がいくつもあって、船の航行の妨げになってきました。それがイサーンの開発を遅らせた理由の一つだったとも言えます。そうした自然的な障害の中で最大のものが、現在のラオスとカンボジアの国境付近にある島々や滝で、写真のコーンパペンの滝はその代表的なものです。まだ雨季に入って間もない時期で、近年の流量減少があるとはいえ、さすがに迫力のある滝でしたが、その激流の中にも簗で漁をしている人々の姿が見られました。 |
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ラオス南部から帰った翌々日には、北部タイでの調査に向かいました。そこでの共同研究者であるシルパコン大学のプラパン先生は、森林保全と山村の農業の両立をはかるため、地理情報システムの技術を応用して、ムラの人たちが自分たちで土地利用のルールを決める活動に関わってきました。北タイゼミのカウンターパートであるNGOのリンクと同じような活動をしてきたわけです。この地域の山村に住む少数民族の人たちの経済活動や生活は、交通などのインフラストラクチャーの整備とともに、近年、急速に変化しています。そのような変化は土地利用にもはっきりとあらわれていて、たとえばGoogle Earthで経緯度19.135, 100.995にジャンプして、2001年と2010年の土地利用を比べてみてください。このルア族のパンヤン村では、従来の焼畑での陸稲栽培に代わり、トウモロコシの連作や輪作が年々拡大しています。森林休閑の行われてきた山斜面では、今では階段耕作が行われるようになりました。 |
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